プライバシーを守りながらお互い助け合える、ということで、二世帯住宅にする人が増えています。
親世代の方は一緒に住む人がいえると安心ですし、子供世代の人は育児や家事を手伝ってもらえるので、二世帯住宅に立て替えて一緒に住む人が多くなっています。

住む人達にとってもメリットの多い二世帯住宅ですが、実は相続税の観点から見てもメリットがあり、節税対策になります。

では、二世帯住宅だとどのような節税効果があるのでしょうか。
また、どのくらい節税効果があるのでしょうか。

二世帯住宅が人気の理由

国土交通省の『平成25年住生活総合調査』によると、過去5年に住み替えをした目的を見てみると、「親、子などとの同居・隣居・近居」が10.6%で、平成5年の4.1%から2倍以上伸びています
また、今後5年以内の住み替え目的では、「親、子などとの同居・隣居・近居」が17.7%となり、今後二世帯住宅がさらに増えると見込まれています。

二世帯住宅が増えている理由としては、

  • 共働き世帯が増えたため、子育てを両親にサポートしてもらいたい人が増えた
  • 離婚率が増加することによって、一人で子育てする人が増え、親と同居して家事や育児をサポートしてもらいたい人が増えた
  • 二世帯住宅のほうが新しく土地を購入する必要がないので、費用を抑えることができる

といったことが考えられます。

また、両親の体調の変化にもすぐ気づきやすいため、一緒に暮らしていると安心です。

デメリットとしてはプライバシーがない、生活スタイルが合わないとストレスが溜まる、といったことが挙げられますが、同じ敷地内に2つ住宅を立てて、廊下や階段でつながっているタイプのものは、ほとんど別々に過ごすこともできるので、デメリットもカバーすることができます。

二世帯住宅は相続税対策になる?

相続税には様々な控除や特例が用意されていて、その中に小規模宅地等の特例という特例があります。
これは、被相続人と同居していた家を相続する場合、その土地の評価額が80%減額される、という特例です。

例えば、二世帯住宅で住んでいて、両親が亡くなって家を相続する場合、その土地の評価額が5,000万円だとします。小規模宅地等の特例を利用しない場合はこの5,000万円が課税対象になりますが、小規模宅地等の特例を利用する場合、5,000万円×(100%-80%)=1,000万円が課税対象になります。

少し注意しなければならないのが、家を相続した場合、土地は評価額を80%減額することができますが、建物はまた別ということです。
相続が発生すると被相続人の遺産は全て洗い出し、それぞれ評価額を決定してから相続税の計算に入るため、建物と土地はどのみちそれぞれ評価額を割り出すことになります。その際、減額されるのは土地だけで建物は減額対象ではないので覚えておきましょう。

小規模宅地等の特例を受けるための条件

小規模宅地等の特例を受けるためには、下記の条件を満たしている必要があります。

  • 被相続人と生活を共にしていた
  • 相続税の申告が終わるまで、引き続きその家に住む

被相続人と生活を共にしていた、というのは、二世帯住宅であれば問題なくクリアできます。
また、相続税の申告が終わるまで引き続きその家に住む、というのも、二世帯住宅にしていればすぐに引っ越すということもめったにないでしょうから、あまり心配する必要はありません。

ただ、被相続人が亡くなったのをきっかけに、どこかへ引っ越す、というような場合、相続税の申告が終わってからでないと、小規模宅地等の特例が受けられなくなります。
もし引っ越しを考えている場合は、税理士に相談して、引っ越しのタイミングなど決めるようにしましょう。

二世帯住宅なら敷地面積の上限がない?

本来、小規模宅地等の特例は適用できるのが330㎡までとされています。
それを超える分に関しては評価額はそのままになります。

しかし二世帯住宅の場合は例外的に敷地の全体に適用することができます。敷地面積を世帯別に分ける必要もありません。

二世帯住宅の形態も特に決まりはなく、建物内部で行き来できる構造でも、いったん外に出なければならない構造でも、小規模宅地等の特例を適用することができます。

二世帯住宅にして小規模宅地等の特例を適用した例

Aさんが家を建て替えてて二世帯住宅にし、長男家族を呼んだ場合と、二世帯住宅にせずそのまま別々で暮らしていた場合の相続税の違いを見てみましょう。

Aさんの預貯金→1億円
建て替え費用→5,000万円
敷地の評価額→1億円
敷地面積→300万円
建て替え前の建物の評価額→1,000万円
建て替え後の建物の評価額→2,000万円

二世帯住宅にした場合

二世帯住宅にした場合、預貯金は5,000万円に減りますが、小規模宅地等の特例が適用できます。
敷地の評価額は1億円ですが、小規模宅地等の特例を適用することで2,000万円になります。

預貯金5,000万円+敷地の評価額2,000万円+建て替え後の建物の評価額2,000万円で、遺産総額は9,000万円になります。
相続人は長男1人で、基礎控除額は3,600万円になるので、9,000万円-3,600万円=5,400万円が課税対象額になります。

5,400万円×3%-700万円で、920万円が相続税となります。

二世帯住宅にしなかった場合

二世帯住宅にしなかった場合、Aさんの遺産総額は預貯金1億円と土地の1億円、建て替え前の評価額1,000万円で合わせて2億1,000万円になります。
相続人は長男1人で、基礎控除額3,600万円なので、1億円7,400万円が課税対象額になります。相続税は40%、控除額が1,700万円なので、相続税は5,260万円になります。

920万円と比べるとかなり相続税が高いのが分かりますね。もちろん、二世帯住宅を建てたことによって手持ちの金額は減ります。しかしどのみち住む場所として別のところに家を建てるのであれば、相続税を抑えられたほうがいいですよね。

まとめ

プライバシーを守りながらお互いにサポートしあえると人気の二世帯住宅ですが、相続税対策としても効果があります。
被相続人と一緒に住んでいた住宅を相続する場合、小規模宅地等の特例が適用され、土地の評価額が80%減額されます。そうすることで相続税をぐっと抑えられますし、場合によっては相続税がかからなくなることもあります。
これから二世帯住宅にしようか悩んでいる方は、一度税理士に相談してどのように相続税対策したらいいか聞いてみるのがおすすめです。