相続が発生したら相続税は支払うもの、と当然のように思っている方もいらっしゃいますが、世界には相続税がない国もあります。富裕層の中には、相続税を逃れるために海外移住する人もいますが、本当に相続税を逃れることはできるのでしょうか。
また、相続税を逃れるために海外移住するならどこがいいのでしょうか。

日本は相続税が高い?

日本は相続税が高い、ということはよく言われています。
特に、2015年に相続税の法改正があり、税率が引き上げられました。最高税率が50%から55%になっただけでなく、基礎控除額は引き下げられたのです。
基礎控除とは、控除額より相続した財産が少なければ、相続税を支払わなくていい、というものです。
以前は5,000万円+1,000万円×法定相続人の数、だったのが、法改正により3,000万円+600万円×法定相続人の数、に変更になりました。
これによって、前年よりも相続税を支払った人は8割増しになり、相続税を支払った人は全体の8%にのぼりました。

では、他の主要国と比べると、税率、基礎控除額はどのように違うのでしょうか。

最低税率 最高税率 基礎控除額
日本 10% 55% 3000万円+〔相続人×600万円〕
米国 18% 40% 1118万$
英国 0% 40% 32.5万£
ドイツ 7% 30% 配偶者:剰余調整分+75.6万€/子:40万€
フランス 5% 45% 10万€

基礎控除額を日本円に換算すると、よく分かるかと思います。

基礎控除額
日本 3000万円+〔相続人×600万円〕
米国 約12億円。配偶者は免税
英国 約4400万円。配偶者は免税
ドイツ 配偶者が約9200億円、子が約4900万円
フランス 約1200万円。配偶者は免税

最高税率は他の国と比べても高く、基礎控除額は低いことが分かりますよね。

相続税がない国

では、相続税がない国というのもあるのでしょうか。
相続税がない国は、イタリアカナダシンガポールオーストラリアマレーシアなどがあります。また、福利厚生が手厚い北欧でも相続税が廃止されています。その他中国インドも、相続税が廃止されています。
イギリス、ドイツ、フランスでは、相続税を廃止しようという方向に進んでいます。

海外移住したら相続税を免れる?

では相続税がない国に海外移住したら相続税を免れることができるのでしょうか。
実は海外移住で相続税を免れるのは簡単ではありません。
まず、以前は5年でよかった移住期間は、2017年から10年に延ばされました。つまり10年は海外移住していないと、相続税が課せられることになります。さらに、国は富裕層が海外に逃げるのを防ぐため、相続人だけでなく被相続人も海外に10年以上住んでいないと、相続税がかかることになります。

被相続人が配偶者の場合は一緒に海外移住すれば済みますが、子供が被相続人の場合は家族で移住しなければなりません。

日本人が住みやすい海外移住先は?

もし相続税を免れるためには、海外に10年以上住む必要があります。
10年も住むのであれば、住みやすい国がいいですよね。日本人が住みやすく、海外移住に向いている国はどこでしょうか。

シンガポール

シンガポールは多くの富裕層が移住している、人気のある国です。相続税や贈与税がないだけでなく、「所得税の最高税率20%」「法人税17%」というメリットがあり、富裕層が資産運用するのにはうってつけの国です。日本からもそんなに遠くなく、日本食のお店も多いのでとても住みやすいです。東南アジアの中でもダントツに治安がいいので、安心して暮らしたい方にも向いています。
ただし、永住権を手に入れるためには、指定ファンドに約2億円を投資する、または、約2億円規模のビジネスを立ち上げる必要があり、だれでも簡単に、というわけではありません。

香港

香港もアジアの富裕層が移住している、人気のある国です。日本から近く、セブンイレブンやサンクスなど日本のコンビニもあるので、とても住みやすいです。
シンガポールよりは永住権をとるハードルが低く、7年間香港に住めば永住権をとることができます。永住権を取得できれば、自由に企業したり就労することも自由にできます。

オーストラリア

オーストラリアは日本と時差もなく、四季もあるので住みやすいと人気の国です。日本人のコミュニティもあり、日本食レストランもあります。
永住権を取得するためには、まずビザを取得する必要がありますが、用途に合わせていくつかビザが用意されています。

  • 退職者向けビザ
  • 投資家向けビザ
  • 専門家用ビザ(美容師、調理師)など

このうち、投資家向けビザはさらに「一般投資家向け」「上級投資家ビザ」「最上級投資家ビザ」にわかれているので、投資をしている人にとってはとてもビザがとりやすい国です。

まとめ

日本は他の国と比べても相続税が高い国です。2015年に法改正が入ったことにより、基礎控除額が引き下げられ、相続税を支払わなければならない人も増えました。
海外では相続税がない国もあり、そのために海外移住する人もいます。おすすめの国としてはシンガポール、香港、オーストラリアなどです。
ただ、相続税を免れるためには相続人だけでなく、被相続人も10年以上海外に住む必要があるので、軽い気持ちではできません。もし海外移住を考えている方は、実際に移住した人の意見もしっかり聞いて検討するようにしましょう。