両親が亡くなったら実家の一軒家を相続することになるけど、相続税がいくらかかるか心配…と思っている人方は多いのではないでしょうか。実家で一緒に住んでいない場合、売却して相続税の支払いに充てることができるかもしれませんが、一緒に住んでいる場合、相続税が支払えず、手放すことになるのでは…と心配になりますよね。
実家の一軒家を相続した場合、相続税はいくらくらいかかるのでしょうか。

家の価格たけでは決められない相続税

家の売却価格、もしくは資産価値としてどれくらいあるかが分かれば、相続税もだいたいいくらか分かるのか、というと、じつはそうではありません。相続税の計算というのは意外と複雑で、家だけでなく預貯金、現金、保険金など、遺産を全て合わせていくらになるか洗い出すところからはじめます。ゴルフの会員権や、車、株などの資産、全てを洗い出し、そこから控除などを差し引き、相続する人数によって計算をしていきます。
そのため、単純に家の価格だけで相続税がいくらになるか、計算することはできないんです。

ここでは、まず家の価格の求め方をご紹介し、その後相続税の計算方法をご紹介していきます。

家の価格(評価額)の求め方

まず、家の価格、つまり相続税の計算においてその家がどれくらいの価値があるかという評価額の求め方を見てみましょう。
家の評価額は建物と土地で分けて計算します。

建物

建物の評価額は、固定資産税評価額を用いて計算します。
固定資産税評価額とは各市町村が3年に1度決める固定資産の評価額のことで、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書についてくる課税明細書などに記載されています。

通常、この固定資産税評価額がそのまま評価額として使われます。

土地

土地の評価額の求め方は2つあり、1つは路線価というものを用いて計算する方法です。
路線価とは、国税庁が決めている土地の価格で、道路ごとにその道路に面した1平方メートル(㎡)あたりの土地の価格が1,000円単位で示されています。
家が面している道路の路線価と、土地の広さで計算します。
もう1つは倍率方式というもので、路線価が定められていない土地はこの倍率方式で計算します。
固定資産税評価額に、国税庁が定めた「評価倍率」をかけて求めます。

相続税の計算方法

建物と土地の評価額が求められたら、次は預貯金など他の遺産を全て合算し、遺産総額を割り出します。
遺産にはこういったプラスの遺産だけでなく、借金やローンがあればマイナスの遺産として、差し引きします。
遺産総額が割り出せたら、相続税の計算をしていきますが、実際に相続税を支払っている人は全体の8%程度と言われています。
それは、相続税の計算をする際に、まず基礎控除というものが用意されているからです。
遺産総額が基礎控除内であれば、相続税はかからず、相続税の申告もしなくてよくなります。

基礎控除とは?

基礎控除は、
3000万円+600万円×法定相続人の数
で求めることになります。
法定相続人とは、実際に相続する人とはまた別で、法律によって定められた相続の権利がある人のことです。
法定相続人には優先順位があり、優先順位が高い人が法定相続人となります。
1.子供や孫
2.両親や祖父母
3.兄弟姉妹
ここに、配偶者がいれば配偶者をプラスすることになります。
例えば子供しかいない場合は子供だけですが、子供と配偶者がいる場合は子供と配偶者が法定相続人になります。
子供がおらず両親しかいない場合は両親、子供がおらず両親と配偶者がいる場合は両親と配偶者が法定相続人になります。

子供が2人、配偶者もいる場合、法定相続人が3人になるので、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人で、4,800万円となります。
家や預貯金の遺産総額がこの4,800万円以内であれば、相続税は発生せず申告もしなくていいことになります。

基礎控除額を超えてしまったら

基礎控除額を超えてしまったら、基礎控除額を超えた金額に対して相続税がかかることになります。
計算方法としては、まず法定相続人で金額を分けて、各法定相続人にいくら相続税がかかるか計算します。
法定相続人ごとの金額の分け方は下記の記事で詳しくご紹介しています。

例えば基礎控除額を超えた金額が2,000万円で、子供2人と配偶者が法定相続人の場合、配偶者が1,000万円、子供がそれぞれ500万円ずつ取り分となります。

税率は下記のとおりなので、

課税価格 税率 控除額
1,000万円以下 10% ー
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

全員1,000万円以下となり、税率は10%、配偶者の税金が100万円、子供たちは50万円ずつになります。
最後にそれぞれの税金を足して、200万円が相続税となります。

実際に相続する人は必ずしも配偶者と子供である必要はありませんが、相続税の計算はこの法定相続人に基づいて計算することになります。

小規模宅地等の特例を利用しよう

遺産総額が大きくなければ、基礎控除額を利用すればほとんどの人が相続税がかからなくなりますが、遺産総額が大きくなるほど、基礎控除額を超えてしまい、相続税も高くなってきます。
特に都心部などは、土地の評価額が高いので、一軒家を相続するとなると遺産総額も大きくなってしまいます。
例えば基礎控除額を超えた金額が1億円あり、子供1人が相続人の場合税率は30%、控除額が700万円になるので、1億円×30%-700万円で、2300万円が相続税となります。

遺産総額のうち、預貯金が多くお占める場合2300万円を支払えるかもしれませんが、一軒家の評価額が高く、預貯金が少ない場合、相続税が支払えず一軒家を手放してしまうことになってしまいますよね。

しかし、相続人の住むところが亡くならないよう配慮された控除が、『小規模宅地等の特例』になります。
小規模宅地等の特例では、相続した家が居住用であれば、限度面積330㎡までは土地の評価額を80%減額できるという特例です。

遺産総額1億円のうち、預金が3,000万円、一軒家の評価額が7,000万円だったとします。
そのうち建物の評価額が1,000万円、土地の評価額が6,000万円だとして、相続した家に居住する、土地の面積も330㎡までなのであれば、6,000万円×20%=1,200万円まで評価額を下げることができます。

そうすると、預金3,000万円、建物が1,000万円、土地が1,200万円となり、合計5,200万円に対して相続税がかかることになります。
税率30%、控除額が700万円なので、5,200万円×30%-700万円=860万円が相続税になります。

小規模宅地等の特例を利用する前と後で、相続税の金額が大きく変わったのが分かりますね。

ただ、相続した後相続人が居住する、土地の面積が330㎡まで、という決まりがあるので、そこには注意するようにしましょう。

まとめ

一軒家を相続したら、どれくらい相続税がかかるのか心配…という方は多いですよね。
しかし、基礎控除を利用すれば9割以上の人がそもそも相続税を支払わなくてよくなりますし、相続した家に居住するのであれば、小規模宅地等の特例を利用すれば、相続税をぐっと抑えることができます。

土地や家を相続する場合、計算が複雑になることが多く、間違って計算したまま申告してしまうと、本来より多く相続税を支払うことにもなりかねません。
また、今回は紹介していませんが、他にも配偶者控除や未成年者控除など他にも控除があるので、うまく利用すれば相続税をかなり抑えることもできます。

自分で計算するのが難しそうだな、と感じた時は、一度税理士に相談してみるのがおすすめです。