相続、というと一般的には預金や土地などが思い浮かびますが、投資信託を相続することもあるでしょう。
預金は金額が分かりやすいですが、投資信託を相続した場合は、相続税の計算はどうやって行うのでしょうか。

投資信託とは?

投資信託とは、投資家からお金を集め、そのお金でプロが運用をし、運用で出た利益を投資額に応じて投資家に配当する、という商品のことです。「ファンド」と呼ばれることもあります。
普通投資、というと自分で運用する必要がありますが、投資信託はプロに運用を任せることができるので、忙しい人や運用の知識がない人でも始めることができます。

投資信託は「投資信託運用会社」で作られ、主に銀行や証券会社、郵便局などを通して販売されます。銀行から「投資信託に興味はありませんか」と声をかけられたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そして投資家から集められた資金は「信託銀行」に保管してもらいます。運用会社はその資金をどのように運用するのか考え、それを信託銀行に指示します。そして信託銀行は受けた指示通り、株などの売買を行います。

そうして出た利益を、投資家たちに分配します。

投資信託の種類

投資信託には色々な側面からの分類方法があります。

購入できるタイミング

単位型→最初の募集時のみにしか購入することができません。一度運用が始まってしまうと資金の追加もできません。運用期間もあらかじめ決められています。

追加型→投資信託が運用されている期間中、いつでも購入することができます。追加で購入することもでき、運用期間は無期限、あるいは長期に渡るものが多くなっています。

分配があるかどうか

分配あり→分配ありの場合、投資がうまくいって利益が出ていれば、月単位や年単位などで分配があります。ただ、毎度分配があるわけではなく、運用がうまくいっていないと分配がない場合もあります。そのため、投資するタイミングによっては、それまで毎月分配があったのに、投資した途端分配がなくなる、ということもあり得ます。

分配なし→分配はできるだけある方がいいように思えますが、分配なしのタイプにもメリットはあります。それは、分配しない分、それを投資資金にまわせるということです。分配がないので、基本的には解約、または売却するまで利益は得られません。また、分配ありのタイプにも言えることですが、解約または売却した時、購入した時の価格より下回っていれば損失が出る可能性もあります。

投資対象が何になるか

投資対象には大きく分けて2つあります。

公社債投資信託→投資対象に株式を入れず、国債や社債などの公社債を中心に取引する投資信託。

株式投資信託→公社債だけでなく株式も交えて取引する投資信託。

上場しているかどうか

投資信託には、証券取引所に上場しているものもあります。

上場している→ETFと呼ばれ、証券取引所に上場しています。証券取引所でしか売買することはできませんが、株式と同様に売買単位が決まっており、売買単位ごとで取引します。運用の特徴は、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)に連動するように運用されているということです。

上場していない→証券会社や銀行、郵便局で売買することができます。ETFより種類や数が圧倒的に多いのが特徴です。

投資信託を相続したら?

では投資信託を相続したら、どうするのがいいのでしょうか。
投資信託を相続したら、そのまま名義変更して引き継ぐか、売却してしまう、という2パターンが考えられます。
まずは名義変更して引き継ぐ場合を見てみましょう。

名義変更して引き継ぐ場合

名義変更する場合、まずは証券会社に連絡する必要があります。基本的には証券会社が言う通りに動けば問題ありません。
まずは名義変更に必要な書類が送られてくるので、記入、または準備する書類があれば準備し、提出すれば引継ぎは完了します。

その際、「本当に相続したのかどうか」を確認するために、以下のものが必要になります。

遺言書(ある場合)

遺言書があり、投資信託を相続する人が誰か指定されている場合は、その遺言書に基づいて相続をします。
遺言書によって相続が確定していることを証明するため、遺言書を提出することになります。

遺産分割協議書(遺言書がない場合)

遺言書がない場合は、基本的には法定相続人が法定相続分に基づいて相続をします。ただ、あくまで法定相続人同士で話し合って決めるため、相続人同士で異論がないか確認し、その証拠として遺産分割協議書を作成します。
それによって、誰が何を、どのくらい相続するのかということが決定します。
遺言書がない場合は、その遺産分割協議書を提出することで、相続したという証明になります。

評価額はどうやって決める?

では名義変更して引き継いだ場合、相続税の評価額はどうやって決めるのでしょうか。
相続税の評価額は、投資信託の種類によって変わってきます。

上場している投資信託の場合

上場している投資信託の場合、上場株式の評価額の決め方と同じになります。
つまり、以下の4つのうち、最も低い金額が選ばれます。

①相続が発生した日の最終価格
②相続が発生した月の最終価格の平均額
③相続が発生した月の前月の最終価格の平均額
④相続が発生した月の前々月の最終価格の平均額

最終価格とは、その日の最後についた金額になります。
詳しくはこちらの記事(相続税の計算で株式はどう評価される?上場株式と非上場株式の違い)でご紹介しています。

一般的な投資信託の場合

一般的な投資信託の場合、以下の計算式で評価額を求めます。

課税時期の1口当たりの基準価額×口数-課税時期において解約請求等をした場合に源泉徴収されるべき所得税相当額-信託財産留保額および解約手数料(消費税に相当する額を含む)

まずは1口当たりの基準価額×口数で価格を割り出し、そこからもし解約した場合に支払う所得税額、および解約手数料を引きます。

次に、相続後に売却する場合を見てみましょう。

相続後に売却する場合

相続後に売却、または解約する場合も、まずは証券会社の解約手続きに沿って手続きを進めましょう。

評価額はどうやって決める?

相続税の評価額の決め方は、売却せず名義変更した時と同じです。
ただ、売却して利益が出た場合、所得税など他の税金がかかることになります。

被相続人が買った時より、相続人が売却した時の基準価額のほうが下がっていれば、利益は出ず損失になるので、課税はされません。
逆に、被相続人が買った時より、相続人が売却した時の基準価額のほうが上がっていれば、利益が出ることになります。もし利益が出た場合、「譲渡所得」として、所得税:15.315%(うち、復興特別所得税:0.315%)、住民税:5%、合計20.315%の申告分離課税がかかることになります。

こちらは、売却するタイミングによって損失になったり利益が出たりする場合があるので、もし利益を出したい、高い時に売りたい、というような場合は、周囲の資産運用に詳しい人や証券会社、銀行、ファイナンシャル・プランナ-などに相談するのがいでしょう。もし運用に興味がなければ、売却してしまうことをおすすめします。

まとめ

投資信託の相続は、投資に慣れている方にとってはそんなに難しいものではありませんが、慣れていない方にとっては難しく感じるかもしれません。
そのまま引き継いで運用するのか、売却してしまったほうがいいのかも、悩ましい問題かもしれません。
利益が出ると税金を納める必要がありますし、逆に損失が出れば節税効果が得られる場合もあります。
どのように扱ったらいいのか分からない、という場合、一度税理士に相談することをおすすめします。