相続税の申告をしたら一安心、と思いきや、税務署から税務調査が入ることもあります。故意に嘘の申告をしたわけではなくても、税務調査が入ることがあります。税務調査というと怖い人が来てガサ入れされるのでは、というイメージの方もいらっしゃいますが、基本的にはそんなことはありません。
では、税務署からの税務調査はどんな人が対象になるのでしょうか。また、どんなことを聞かれるのでしょうか。
税務調査が来る割合はどのくらい?
では、相続税の申告をした人のうち、税務調査が来るのはどれくらいの割合なのでしょうか。実は税務調査は入るのは21%、つまり4〜5人に1人は税務調査が入ると言われています。
では、どんな人が対象になりやすいのでしょうか。
税務調査の対象になりやすい人
申告書に不備がある人
相続税の申告書は、機会で読み取れるようにマークシート形式になっています。機会で読み取って、計算間違いや不備がある場合、相続税の金額も間違えているのでは、と思われたり、嘘の申告をしているのではないか、と思われて税務調査が入る可能性が高くなります。
納税額が多い人
税務署は独自の「富裕層リスト」を持っています。過去に高級な車を買っていたり、不動産を買っている人、国債保有者などをチェックし、システム上で管理しているのです。
その情報から、だいたいの総遺産額を予想しています。その予想と、実際の申告での金額に大きな差があると、怪しいなと思われて税務調査が入りやすいです。
また、富裕層のほうが、どうしても相続税の金額が大きくなります。申告ミスをした際に、間違える金額も大きくなりやすいので、どうしてもチェックされやすくなります。
自分で申告した人
相続税の申告をしている人の多くは税理士をつけて申告をしています。税理士をつけると、税理士の署名欄があるので、申告の際にすぐ分かります。
しかし税理士をつけていない場合、もしかしたら計算ミスや、遺産のカウントを間違えていてるのではないか、と調査が入りやすくなります。
金融資産を多く相続した人
金融資産を多く相続した人、というのは、その財産を持っていることになるので、税務署から目をつけられやすいです。
税務署は相続人の許可を得ずに、銀行に預貯金の金額を聞いたり、了承を得ずに株式はどれくらい持っているが照会することができます。過去の入出金履歴も見ることができるので、多額の出金があったのに申告にはそれが含まれていなそうな場合など、嘘の申告をしているのでは、と思われてしまいます。
相続税があるはずなのに無申告の人
不動産を所有していたり、納税額から遺産がある程度あり、相続税が発生しているはずなのに相続税の申告がない人も、あやしいと思われやすいです。相続税の申告はそもそも、基礎控除というものが用意されているため、基礎控除内であれば申告もしなくていいことになっています。しかし基礎控除額を超えていると、他の控除を利用して相続税が0円になろうと、とりあえず申告はしなければなりません。
ある程度の預貯金があったり、不動産を所有しているのに、その申告自体がないということは、あやしいと思われて調査が入りやすくなります。
遺産総額が3億円以上の人
遺産総額が3億円以上の場合、税務調査が入りやすくなります。というのも、相続税の申告をする人の遺産総額の平均は2億5,000万円と言われています。そのため、それより多い3億円になってくると、税務調査が入る可能性が高くなります。
税務調査で本当に申告漏れが見つかるの?
では税務調査をしたからといって、本当に申告漏れが見つかるのでしょうか。確かに故意に財産を隠したりしていれば見つかるのは仕方ないですが、そんなに多くの人が財産を隠しているとも思えませんよね。
しかし実際は、税務調査に入られた人の8割以上が申告漏れを指摘されています。
相続税の申告は、財産が預貯金だけであればそこまで複雑ではありませんが、土地や不動産を持っていたりすると計算がとても複雑になってきます。たとえ税理士であっても、相続税の申告に慣れていないと、計算を間違えたりすることがあります。
もちろんお金を払って税理士に依頼している以上、ミスがあるのはいけませんが、それくらい相続税の計算はとても複雑になります。もし税理士に依頼する場合は、近所だから、なんとなく、という理由で選ぶのではなく、相続税に強い税理士に依頼することをおすすめします。
準備しておく事
税務調査では、税理士に依頼した場合ではまず税理士に税務調査をしたいという連絡がいきます、税理士に依頼していない場合は直接連絡がきます。ただ、そこでいきなり質問されたりするようなことはなく、あくまで調査の日取りを決めるための連絡です。
もし連絡がきても、財産を隠してもいない、申告の際も特に気になる点がなかったのであれば、何も不安に思わず当日を迎えたらいいでしょう。
ただ、もし気になる点があったり、少し心当たりがある場合は、先に税理士に相談するのがおすすめです。税務調査で指摘されてから修正するのと、自ら修正するのとでは、ペナルティの重さが変わってきます。税理士に依頼していなかった場合でも、一度相談してみるのがいいでしょう。
当日聞かれること
税務調査では、質問には正直に答えるのが一番です。質問としては、下記のようなことを聞かれることが多いです。
- 被相続人が相続財産をどのように築いたか
- 被相続人の出身地や職業、結婚の時期、趣味、月々の生活費など
- 被相続人の日記のがあるかどうか
- 被相続人の印鑑を見せてほしい
- 被相続人や相続人は貸金庫を持っているかどうか
- 被相続人や相続人が取引のある金融機関と支店名は(過去に使っていたものを含めて)
- 被相続人の配偶者の財産状況はどんな状況か
- 被相続人の死亡直前の財産管理は誰が行なっていたか
- 被相続人が亡くなったときの状況はどんなだったか
- 被相続人の介護や入院にかかった費用はいくらくらいだったか
- 相続人と税理士との関係はどのような関係か
- 相続税を納税した金融機関はどこか
- 相続人の出身大学や職業、住まいなどについて
- 相続人の家の購入金額や売却金額はいくらだったか
- 相続人の家族の年齢や学校名、職業など
- 相続開始直前で下ろした現金の具体的な使い道
- 相続人の投資をしているか、している場合どんな状況か
- 生前に贈与を受けたことがあるか
税務調査で申告漏れが見つかった場合のペナルティ
もし税務調査で申告漏れが見つかった場合、以下の2つのペナルティが課せられます。
1.延滞税
本来払うべき相続税を支払っていなかったわけなので、延滞税がかかります。
延滞税は、延滞が2カ月以内の場合は7.3%、それ以降は年14.6%になります。
税務調査は、相続税の申告をしてから2カ月以上経っていることがほとんどなので、年14.6%がかかると思っておきましょう。
2.過少申告税、または無申告加算税、または重加算税
過少申告税
過少申告税は、相続税の申告を少なく申告していた場合のペナルティです。わざとではなく、うっかり漏れていたケースや、評価を間違えていたケースがこれにあたります。
追加で払う相続税の10%がペナルティとなります。
無申告加算税
相続税の申告をしなければならないのに、申告していなかった場合に課せられるペナルティです。
隠ぺいの意図はなく、間違えていたケースがこれにあたります。
相続税の15%がペナルティとなります。
重加算税
財産を隠していたり、意図的に少なく申告したような場合は重加算税が課せられます。
税率は35%で、さらに無申告だった場合は40%になります。
本当は200万円の相続税があったのに、無申告にしていた場合は80万円がペナルティとなります。
まとめ
相続税の税務調査は、だいたい4~5人に1人の割合で受けることになります。特になにもやましいことがなければ、協力的な対応で応じましょう。
もし申告の際に気になっていたことがあった場合は、早めに税理士に相談し、税務調査が入る前に自ら修正をしたほうがペナルティが軽くなります。
相続税の申告は、税理士であっても経験が浅かったり、相続税の申告に詳しくない場合は、間違えてしまうこともあります。
もし相続税の申告をする場合には、相続税に詳しい税理士に依頼するようにしましょう。