相続をすると必ず相続税を支払わなければならない、と思っている方も多いですが、相続では非課税の財産や、非課税枠というものがあり、相続税を支払う人は全体の1割と言われています。では非課税の財産や、非課税枠とはどんなものなのでしょうか。
非課税財産とは?
非課税財産とは、財産の中でも課税対象とならない財産のことです。非課税財産には以下のようなものがあります。
墓地や墓石、仏壇など
被相続人が生前購入した墓地や墓石、仏壇、仏具などは非課税財産として扱われ、課税対象にはなりません。ただ、高価な骨董品や純金製の仏壇などは財産として見なされてしまうので注意が必要です。
死亡保険金、死亡退職金
死亡保険金、死亡退職金には一定の非課税枠が設けられています。
死亡保険金や死亡退職金の受取人が相続人の誰かに指定されていた場合、被相続人が亡くなった時点で相続人の固有財産とみなすことができるので、遺産分割の対象外です。しかし被相続人から継承した財産と考えることもできるので、相続税計算の際は含めることになっています。そのかわり、非課税枠が用意されているので、ある程度の金額は課税されません。
非課税枠の金額は、
死亡保険金の非課税枠=500万円×法定相続人の数
死亡退職金の非課税枠=500万円×法定相続人の数
です。法定相続人とは、民法によって定められた相続人のことで、実際に相続する人と必ず一致するわけではありません。
国や地方公共団体などに寄付した財産
相続によって得た財産を、国や地方自治体などに寄付した場合、寄付した金額を課税対象から外すことができます。
寄付先は、学校や日本赤十字社、ユニセフなどがあり、他にも東日本大震災復興支援財団など要件を満たせば非課税となる団体もあります。寄付先には他に多くの団体がありますので、寄付する前に寄付先に問い合わせてみて、非課税の特例が受けられるか聞いてい見ましょう。
相続税は被相続人が亡くなってから10ヶ月以内に申告をする必要があります。そのため、寄付をする際は申告までに寄付をして、その証明書や明細書を一緒に提出する必要があります。
マイナスの財産で課税遺産総額を下げましょう
相続する財産というのは、預貯金や不動産などプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産もある場合があります。こういったマイナスの財産は、最初に引いて課税遺産総額を下げることができます。マイナスの財産は、主に下記の2つです。
借金
被相続人が生前借金を抱えていた場合、財産総額から借金の金額分を引くことができます。自営業をしていた場合など、借金の金額も大きくなる傾向があるので、相続税に大きく影響する可能性があります。
また、遺産総額より借金の方が大きく、借金を相続しなければならない場合、相続放棄の手続きをするかどうかの判断にも関わってきます。相続放棄は相続のことを知ってから3カ月以内に家庭裁判所に申述する必要があるため、借金がある場合は金額もしっかり確認するようにしましょう。
葬儀に関わる費用
葬儀に関わる費用は、一般的に被相続人の財産から支払われることが多いので、財産から引くことができます。葬儀会社へ支払う費用、通夜・告別式に関わる飲食代、参列者への御礼費用、火葬・納骨にかかった費用などが該当します。
基礎控除の非課税枠を利用しましょう
相続税は、実は実際に支払う人は全体の1割とも言われていて、ほとんどの人が相続税を支払わなくてもいい仕組みになっています。それは、相続税には基礎控除というものがあり、一定の金額内であれば、課税されないという制度が設けられているからです。相続税をかけることで、相続によって貧富の格差が広がらないようにしていると言われているので、相続の金額が大きければ税金がかかってきますが、ある程度までは税金がかからないようになっているんです。
基礎控除額の計算式は、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
となっています。
法定相続人とは、法律によって定められた相続人のことで、遺言などによって実際に相続する人が異なる場合でも、いったん法定相続人で計算することになります。
法定相続人が1人の場合は3,600万円、2人の場合は4,200万円、3人の場合は4,800万円まで控除されることになるので、遺産総額がそれより少ない場合は相続税がかかりません。
配偶者控除の利用で配偶者は非課税になることがほとんど
基礎控除の他に、相続税では配偶者控除というものが用意されています。
配偶者控除がある理由としては、被相続人の財産を形成する上で少なからず配偶者の協力があったということを考慮し設けられた制度です。
また、一般的には被相続人の子供が相続するより、配偶者が相続したほうが、次の相続までの期間が短くなってしまいます。そうすると、1つの財産に対しての負担が大きくなってしまいます。
そのため、配偶者が相続する場合は配偶者控除を利用することができます。
配偶者控除では、配偶者が相続する金額が1億6,000万円以下、または法定相続分以下の場合は相続税がかかりません。法定相続分とは法律によって定められた相続の取り分のことで、配偶者と子供であれば子供が何人であっても配偶者が1/2、配偶者と両親や祖父母であれば配偶者が2/3、配偶者と兄弟姉妹であれば配偶者が3/4、と定められています。
この法定相続分内であれば、1億6,000万円を超えても税金がかかることはありません。
もし遺言や遺産分割協議によって、法定相続分より多く相続することにんり、1億6,000万円を超える場合は、法定相続分を超えた分だけに相続税がかかります。
未成年者控除や障害者控除も
配偶者控除以外にも控除が利用できる場合があります
相続人が未成年の場合
相続人が未成年の場合、20歳までの養育費は遺産から出されるべき、という考えの元、未成年者控除を利用することができます。控除される金額は、
10万円×(20-その時の年齢)
となります。1年未満の年齢は切り捨てるので、例えば10歳2カ月の年齢であれば、10万円×(20-10)=100万円が控除額になります。
相続の取り分が100万円までであれば相続税が0円になりますし、100万円を超える場合は、超えた分に関して税金がかかることになります。
相続人が障害者の場合
国内に住所があり障害を持つ方が相続する場合、障害者控除を利用することができます。控除額は、通常の障害であれば10万円×85歳(1年未満は切り捨て)になるまでの年齢、特別障害者の場合20万円×85歳(1年未満は切り捨て)になるまでの年齢で計算した金額になります。
小規模宅地等の特例で土地の相続負担を減らせる
控除の他に、小規模宅地等の特例というものもあり、土地を相続する大幅に節税することができます。
小規模宅地等の特例では、被相続人と一緒に住んでいた土地を相続するのであれば、330㎡までであれば評価額を80%減額することができます。
例えば評価額1億円の土地を相続する場合、小規模宅地等の特例を利用しなければ、基礎控除を利用しても6,000万円近くの課税遺産総額があり、相続税も1,000万円を超えてきます。しかし80%減額すると、2,000万円に対して課税されるので、250万円まで減額することができます。また、基礎控除や配偶者控除を利用すれば0円になることも多いです。
土地を相続する際は、小規模宅地等の特例も見落とさないようにしましょう。
まとめ
相続税には、基礎控除という非課税枠が用意されているため、ある一定の金額までは相続税を支払わなくてもいいようになっています。また、その非課税枠を超えてしまった場合でも、配偶者控除や未成年者控除、小規模宅地等の特例を利用することで、相続税を大幅に減額することができます。
ただ、相続税の計算は税理士でも難しいと感じるほど複雑な計算になるので、もし節税したい、どれくらい相続税を減らせるか知りたい、という方は、まずは税理士に相談してみるのがおすすめです。