相続が発生した際、現金や預金であれば金額が分かりやすいですが、株式を相続した場合、金額にするといくらに相当するのか、というのは計算しなければなりません。
取引所に上場している株式であれば、市場価格が公表されていますが、価格は常に変動するため、基準にするタイミングを変えると価格も変わってきます。
また、非上場株式だと市場価格というものがないため、会社の財務状況などから価格を計算しなければなりません。
では、具体的に、それぞれどのように評価をしてくのでしょうか。
上場株式の評価方法
上場株式は日々取引が行われ、価格は常に変動しています。市場価格が公表されていますが、どのタイミングでの価格を参考にしたらいいのでしょうか。
上場株式の場合、下記の4つのタイミングでの価格を調べ、1番低いものが評価になります。
①相続が発生した日の最終価格
②相続が発生した月の最終価格の平均額
③相続が発生した月の前月の最終価格の平均額
④相続が発生した月の前々月の最終価格の平均額
最終価格とは、その日の最後についた金額になります。
例えば、被相続人が3月15日に亡くなった場合の計算について見てみましょう。
①3月15日の最終価格→3,214円
②3月の最終価格の平均額→3,459円
③2月の最終価格の平均額→3,195円
④1月の最終価格の平均額→3,371円
だったとします。
この場合、一番低い3,195円が評価となり、この金額×持っている株式の数が評価額となります。
1,000株持っているとしたら、3,195,000円ですね。
なお、亡くなった日が土日の場合、より近い日の最終価格を選びます。
土曜日であれば前日の金曜日、日曜日であれば翌日の月曜日を選びます。3連休中日の場合は、連休前の日と連休明けの日の最終価格の平均額を最終価格とします。
上場株式の最終価格の調べ方
上場株式の最終価格の調べ方は2つあります。
1.インターネットで調べる
2.証券会社に残高証明書を発行してもらう
1.インターネットで調べる
インターネットでYahoo!ファイナンスにアクセスすると、無料で最終価格を調べることができます。
調べたい銘柄の株価を表示させ、時系列という箇所をクリックすると、過去の株価が表示されます。
月間の平均額は、これらを足して割って計算する方法もありますが、日本取引所グループのホームページに掲載されている月間相場表を見ると簡単に調べられます。
少数点以下は切り捨てて計算します。
2.証券会社に残高証明書を発行してもらう
証券会社に、被相続人が亡くなった日時点での残高証明書を発行してもらうと、4つの最終価格を確認することができます。
非上場株式の評価方法
非上場株式の場合、市場価格などがあるわけではないので、会社の財務状況などから判断します。判断する際は、経営権を支配する場合と支配しない場合とで変わってきます。
経営権を支配する場合
経営権を支配する場合は、会社の規模によってさらに異なってきます。
大きい会社の場合、類似業種比準方式といって、類似業界の上場会社の株価の平均値などを参考に計算されます。
小会社の場合、純資産価額方式といって、相続開始日に会社を清算したとしたら、株主一人当たりの分配額がいくらになるのかで、計算されます。
中会社の場合は、類似業種比準方式と純資産価額方式を一定割合で折衷して計算する併用方式で計算します。
経営権を支配しない場合
経営権を支配しない場合は、配当還元方式という方法で計算されます。
(1株当たりの年間配当額/10%)×(1株当たりの資本金等の額/50円)
事業承継する場合は節税対策を
中小企業のオーナーが亡くなり、後継者が株式を相続した場合、多額の相続税が課せられることになり、会社の経営自体が難しくなる、ということが起こらないよう用意された制度が「事業承継税制」です。
事業承継税制では、非上場株式を後継者が相続する場合、相続税の納税猶予を受けることができます。
納税猶予なので、納税を免除されるわけではありませんが、会社を一定の条件のもと続けていくことで、半永久的に猶予してもらうことができます。
猶予を受け続けるためには、5年以上後継者が代表者を続けること、後継者が譲渡した株式を他の人に譲らないこと、会社の年収が0にならないこと、などいくつか条件があります。
ただ、株式は場合によっては資産価値がかなり高くなり、相続税もかなりの金額になる可能性があります。
会社を潰してしまわないためにも、もし後継者が決まっている場合は、後継者が相続できるよう遺言書を残しておいたり、被相続人が生きているうちにしっかりと決めておくのがいいでしょう。
生前贈与で節税対策後継者
株式の相続では、株価がコロコロ変わるため、思っていたタイミングで相続できず、相続税が高くなってしまった、ということもありますよね。
株式に関しては、生前贈与をすることで、贈与のタイミングをコントロールすることができます。また、贈与であれば毎年少しずつ小分けにして贈与をするという方法もあります。年間100万円までであれば贈与税はかからないので、少しずつ贈与しておけば節税対策になります。
まとめ
株式を相続した場合、金額にするといくらになるのか、相続税はいくらかかるのか、というのは計算が難しいですよね。
上場株式であれば計算できますが、非上場株式の場合は税理士に依頼して計算してもらうのが一般的です。
また、被相続人が会社のオーナーだった場合、「事業承継税制」を利用すれば、半永久的に納税を免除してもらうこともできます。
株式を相続したけどどうしていいか分からない、株式を相続したいけど相続税が高そうで心配、という方は早めに税理士に相談するのがおすすめです。