被相続人がなくなり相続税の手続きをしている間に相続人が亡くなる、ということもあるでしょう。相続税の手続きが終わる前に相続人が亡くなり、新たな相続が発生することを数次相続と言います。
では数次相続が起きた場合、本来の相続税についてはどうなるのでしょうか。また、数次相続は普通の相続と何か計算方法など違うのでしょうか。

数次相続とは

数次相続とは、相続税の手続きをしている間に相続人がなくなり、新たな相続が発生することです。最初の相続を一次相続と言い、その後相続人が亡くなった時の相続を二次相続と言います。一次と二次の相続が続いて起きていることから、数次相続と言われています。
一方、相次相続とは、相続税の手続きが終わった後に、新たな相続が発見することを言います。
相続税の手続きが終わっている場合には相次相続、終わっていない場合には数次相続となります。
ちなみに、相次相続の場合は、最初の相続で納めた相続税の一部を控除してもらえる、相次相続控除というものもあります。

数次相続の具体例

では実際に数次相続が発生した場合、一次相続と二次相続ではどのように相続税を計算するのでしょうか。

配偶者と子供が相続した場合

一次相続でAさんが亡くなり、配偶者(妻)と子供2人が相続することになったとします。しかし相続の手続きが済む前に配偶者である妻も亡くなったとします。その場合はあまり複雑にはならず、妻の相続するはずだった遺産を子供2人が相続することになります。つまり、子供から見たら父と母の遺産を相続するということになります。

母と配偶者が相続した場合

一次相続でBさんが亡くなり、母と配偶者(妻)が相続することになったとします。しかし相続の手続きが済む前に母も亡くなったとします。母が亡くなった時の相続人が母の兄弟である兄だとします。
この場合は、一時相続で本来母が相続するはずだった相続分を、母の兄が相続することになります。それだけで済めばいいですが、もしこの兄も続いて亡くなってしまった場合、兄の配偶者や子供などが相続することになります。そうなると、Bさんの妻と、Bさんの母の兄の配偶者や子供では、関係性がどうしても遠くなってしまいます。そうなると、遺産協議分割に時間がかかってしまったり、相続トラブルが発生しやすくなってしまいます。

数次相続の手続き方法

戸籍謄本を取り寄せて確認

数次相続に限らず、相続税の手続きは誰が相続人なのかをはっきりさせ、相続税の手続きを進めていく必要があります。二次三次と数次相続が続くと、どんどん複雑になっていくため、戸籍謄本をしっかり確認して相続人が誰になるのかを確認する必要があります。
相続人が亡くなり二次相続が発生した場合には、相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本を取り寄せ、だれが相続人になるのかをはっきりさせるようにしましょう。

遺産協議分割書について

遺産協議分割書は、必ず書かなければならないものではありませんが、後から揉めることがないよう、作成しておくのがおすすめです。
もし数次相続になった場合、一時相続の遺産協議分割書と二次相続の遺産協議分割書をまとめて作成することもできますが、内容がややこしく分かりにくくなってしまうので、分けて作成するのがおすすめです。

一時相続の遺産協議分割書

遺産協議分割書には、相続人全員の署名と捺印が必要です。しかし一時相続の遺産協議分割書では、相続人が1人亡くなっているため、その人の分の署名と捺印は貰えないことになります。
そのため、名前を書き、捺印の場所には相続人被兼相続人と記載します。

二次相続の遺産協議分割書

二次相続の遺産協議分割書では、相続人全員の署名と捺印が必要です。もし二次相続の遺産協議分割書作成前に相続人が亡くなり三次相続が発生した場合には二次相続の遺産協議分割書と同じように、捺印の場所に、相続人兼被相続人と記載します。

相続登記をする

数次相続の登記では、まず一時相続の遺産協議分割書を作成して相続登記をし、次に二次相続の遺産協議分割書を作成して相続登記をする、という順番にします。
また、相続登記では、一時相続の相続人が1人の場合、まとめて相続登記をする「中間省略登記」が認められています。相続登記をするのにはお金がかかるため、まとめることで節約につながります。
ただ、中間省略登記では、一時相続の相続人がもともと1人、または複数人いたけど相続放棄などによって最終的に1人になった場合のみに利用することができます。

一時相続で相続人が複数いる場合は中間省略登記はできませんので、一次と二次でわけて順番に登記をしましょう。

まとめ

相続が発生し、相続税の手続きをしている間に相続人が亡くなり、新たな相続が発生することを数次相続と言います。
数次相続では、普通の相続手続きと大きく変わることはありませんが、相続人をしっかり把握するため、戸籍謄本をしっかり確認する必要があります。
特に、二次相続、三次相続と数次相続が続くと、一次相続での相続人と三次相続での相続人は関係性が遠くなりがちです。
相続トラブルに発展しないよう、相続人をはっきりさせるようにしましょう。