二次相続とは、最初の相続(一次相続)で残された配偶者が亡くなる時に起こる2回目の相続のことです。
二次相続であっても相続税はかかりますが、一次相続の時に上手く対策しておかないと二次相続で相続税が多額になってしまった、という事は珍しいことではありません。

相続が発生すると、目の前の相続に対して節税効果を求めてしまいますが、二次相続まで考えて一次相続をしたほうが、2回分を合わせると相続税を安く抑えることもできます。一次相続だけ見ると高く見える相続税も、2回目を合わせてみて相続税が結果的に安くなるならいいですよね。

では、相続税を安く抑えるには一次相続と二次相続でどうしたらいいのでしょうか。

一次相続より二次相続のほうが相続税が高くなる?

相続税対策を考えている場合、一時相続だけでなく二次相続のことも考えて相続するほうが、相続税を安く抑えることができます。というのも、一時相続よりも二次相続のほうが相続税は高くなります。それは相続する財産の金額が一時相続と二次相続で同じであってもです。

ではどうして一時相続よりも二次相続のほうが相続税が高くなるのでしょうか。相続税が高くなる理由は2つあり、

  • 法定相続人が1人減る
  • 配偶者控除が利用できない

ということが挙げられます。

法定相続人が1人減る

法定相続人とは、法律によって相続する権利があると定められた人のことで、実際に相続する人とは異なる場合もあります。
法定相続人は、なれる順位があり、子供→孫→親→祖父母→兄弟、の順番で、順位が高い人が法定相続人となります。また、配偶者がいる場合はそこに配偶者が加わります。

一時相続では、配偶者と子供が法定相続人となり、二次相続では配偶者が亡くなるので子供だけが相続人となります。
例えば子供が2人いた場合、一時相続では配偶者と子供2人の3人が法定相続人となり、二次相続では子供2人だけが法定相続人となります。

この法定相続人は基礎控除額に影響します。
基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数、で計算されます。
つまり、一時相続では基礎控除額は4,800万円なのに対し、二次相続では4,200万人に減ります。

遺産総額がこの基礎控除額内であれば相続税は発生しませんし、基礎控除額を超えるようであれば超えた金額に対してだけ相続税がかかります。つまり、二次相続では法定相続人が減って基礎控除額が減るので、その分相続税が高くなってしまうんです。

配偶者控除が利用できない

配偶者控除とは、配偶者が遺産を相続する場合、法定相続分以内、または1億6,000万円までであれば相続税がかからないという制度です。
これは配偶者だけが受けられる特例で、一時相続では配偶者がいるので利用できますが、二次相続では配偶者がいないので利用することができません。

例えば、一時相続で配偶者控除を利用できるからと全額配偶者が相続したとしても、二次相続で子供たちがそれぞ全額相続することになるので、二次相続で相続税が高くなってしまうんです。

一時相続と二次相続でどのように節税対策できる?

では実際に、一時相続と二次相続を合わせて相続税対策をするにはどうしたらいいのでしょうか。
相続税対策をするポイントは、一時相続で配偶者にどのくらい相続するかがカギを握っています。

一時相続だけを見れば、配偶者が多く相続するほうが、配偶者控除を最大限に活用できるので、相続税を抑えることができます。しかしそうすると、二次相続で子供に相続した時、相続税が高くなってしまい、トータルで見た時にかえって損をすることがあります。

例えば、、法定相続分に基づいて相続した場合と、一時相続で配偶者控除を最大限に活用した場合を見てみましょう。
一時相続では、父の遺産総額:2億円、法定相続人は配偶者(母)と子供2人だとします。
二次相続は配偶者(母)の遺産総額:父から相続した財産のみ、法定相続人は子供2人だとします。

まずは法定相続分に基づいて相続した場合を見てみましょう。

法定相続分に基づいて相続した場合

一時相続→配偶者が1/2、子供たちがそれぞれ4/1ずつ相続することになります。
基礎控除額は3,000万円+600万円×3人で、4,800万円、課税対象額は1億5,200万円になります。
相続税の合計は1,350万円です。

二次相続→子供たちがそれぞれ1/2ずつ相続することになります。
配偶者の遺産総額は1億円、それを子供たちが相続します。
基礎控除額は3,000万円+600万円×2人で4,200万円、課税対象額は5,800万円
相続税の総額は770万円になります。

一時相続と二次相続の合計金額は、2,120万円になります。

配偶者控除を最大限に活用した場合

一時相続→配偶者が1億6,000万円相続、子供たちがそれぞれ2,000万円ずつ相続
基礎控除額は3,000万円+600万円×3人で、4,800万円、課税対象額は1億5,200万円になります。
相続税の総額は540万円になります。

二次相続→配偶者が相続した1億6,000万円を、子供たちがそれぞれ8,000万円ずつ相続
基礎控除額は3,000万円+600万円×2人で4,200万円、課税対象額は1億1,800万円
相続税の総額は2,140万円になります。

一時相続と二次相続の合計金額は、2,680万円になります。

法定相続分に基づいて相続した場合と比べると、一時相続では相続税を抑えられますが、二次相続の分を合わせると、560万円損したことになります。
このように、二次相続のことまでしっかり考えて相続税対策することで、総合的に支払う相続税をより抑えることができます。

二次相続まで考慮した小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、被相続人と一緒に住んでいた家がある場合、その家(土地)を相続すると土地の課税対象額を減額できる制度です。

例えば、一時相続では配偶者も相続人になるので、家を相続するのは配偶者にしておけば、小規模宅地等の特例を適用し、相続税を抑えることができます。しかし配偶者は配偶者控除が用意されているので、小規模宅地等の特例を利用しなくても、基本的に相続税は0円になることがほとんどです。

しかし、一時相続の際に子供が家を相続し、小規模宅地等の特例を適用できれば、配偶者も子供もそれぞれ相続税を抑えることができます。ただ、小規模宅地等の特例を適用するためには、二世帯住宅でもいいので一緒に生活していた、ということが条件になります。
もし預金などの遺産が多く、そのまま相続してしまうと相続税が高くついてしまう、という場合、両親が生きているうちに二世帯住宅に建て替えてしまい、一緒に住めば相続税を抑えることができます。

もし住んでいるエリアが近く、二世帯住宅でもお互い問題ない場合は、二世帯住宅にするのがおすすめです。

まとめ

一時相続と二次相続は、それぞれ相続税対策をするより、二次相続のことを見越して一時相続の時にある程度対策をしておくことで、総合的に支払う相続税を抑えることができます。
小規模宅地等の特例を適用するなら、一時相続が発生する前に二世帯住宅にして一緒に暮らすというのも相続税対策になります。

ただ、相続税の計算は複雑で、適用できる特例も上手く利用する必要があるため、しっかり相続税対策したいという方は税理士に相談するようにしましょう。