相続はいづれ誰もが経験することになるものですが、相続する遺産の中でも最も多いのが銀行貯金ではないでしょうか。
では、銀行貯金を相続したら、相続税はかかるのでしょうか。
また、相続した際はどのような手続きをする必要があるのでしょうか。
銀行貯金に相続税はかかる?
銀行貯金は、相続税の課税対象となっているので、基本的には相続税がかかります。
しかし相続税には基礎控除というものが用意されていて、一定の金額を超えない限り、相続税は発生しません。実際、相続税を支払っているのは全体の1割程度の人と言われています。
基礎控除の金額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数、で決まります。
法定相続人とは、実際に相続する人とは別で、法律によって相続する権利があると認められている人です。遺言書などで相続人が指定されることもありますが、それとは別で、あくまで法律が基準です。
法定相続人は基本的に配偶者がいれば配偶者は必ず該当し、あとは子供、孫、両親、祖父母、兄弟、の順番で、順番が高い人が法定相続人になります。
よくあるのが、配偶者と子供、もしくは子供だけです。
配偶者と子供2人の場合は、法定相続人が3人になるので、4,800万円が基礎控除額になります。
もし財産が銀行貯金だけだった場合、その金額が4,800万円以内であれば相続税はかからないことになります。
また、配偶者には配偶者控除というものが用意されていて、配偶者は相続する財産が1億6,000万円以内であれば相続税がかかることはありません。銀行貯金だけで1億6,000万円を超えるというのはなかなかないでしょうが、土地や家、株式など他の財産を合わせれば超える恐れもあります。
銀行貯金を相続する時の注意点
1.銀行口座は凍結される
被相続人が亡くなると、そのことが銀行に知らされ、本人の銀行口座はまず凍結されます。凍結すると、当然ながらお金の引き出しはできなくなります。もし光熱費などの引き落としに利用していた場合、引き落としもできなくなるので注意してください。
一見面倒に見えるこの凍結ですが、相続人、もしくはそれ以外の人が勝手にお金を引き出すことができないようにするためです。もし凍結されていなかったら、一緒に住んでいる人が通帳と印鑑を持って行き、勝手にお金を使うことができてしまいます。
相続人が誰なのかはっきりさせ、遺産をどのように分割して相続するかを決めるまでは、銀行口座の凍結を解除することはできません。
2.他の銀行口座がないかも調べる
銀行口座は人によっては2つ3つ、もしくはそれ以上持っている場合もあります。いつも使っている銀行口座だけかな、と思っていたら、後から他の銀行口座が見つかる、ということもあります。最近ではネットバンクなどもありますし、家族には教えずに口座開設していることも珍しくありません。
もし見落としたまま相続税の申告をしていて、後から出てきた場合、延滞税が発生する可能性もあります。
できれば被相続人が生きているうちに、どこに銀行口座があるかを聞いておくのがいいでしょう。
3.相続放棄する時は引き落とさない
相続というと財産がプラスになっているイメージが強いですが、被相続人に負債があったりローンを組んでいるような場合、財産がマイナスになっていることもあります。
そういった時、負債を相続しないためには、相続放棄をすることもできます。相続放棄をすると、プラスの財産も相続しなくなりますが、マイナスの財産も相続しなくてよくなります。
ただ、銀行口座からお金を引き出してしまうと、相続放棄ができなくなってしまいます。そうならないためにも、まずは財産を全て確認し、マイナスの財産がないか、その場合は相続放棄をするかどうかしっかり確認するようにしましょう。
銀行貯金を相続する際の手続き
銀行貯金を相続する場合、「預金の払い戻し」と「預金口座の名義変更」があります。
「預金の払い戻し」は相続人が複数人いる場合の手続きで、「預金口座の名義変更」は相続人が1人の場合の手続きです。
預金の払い戻し
残高証明書の発行
まずは金融機関に通帳、死亡の記載がある被相続人の戸籍謄本、法定相続人を証明する戸籍謄本、実印、印鑑証明を提出することで、残高証明書を発行してもらいます。
さらに、「相続手続きの依頼書(※金融機関によって名称が変わります)」を受け取ります。
遺産分割協議書の作成
もし遺言書があって相続人が指定されている場合はそれに従います。しかし遺言書がない場合、法定相続人が話し合って、誰がどの財産をどれくらい相続するか決め、それを書いた遺産分割協議書を作成します。
書類の提出
遺産分割協議書ができたら、遺産分割協議書、相続手続きの依頼書、戸籍謄本などの書類を持って行き、提出します。
1~2週間で現金が払戻されます。
預金口座の名義変更
残高証明書の発行
こちらは預金の払い戻しと同じで、残高証明書を発行してもらいます。
さらに、「相続手続きの依頼書(※金融機関によって名称が変わります)」を受け取ります。
遺産分割協議書の作成
こちらも預金の払い戻しと同じで、遺言書があれば遺言書、ない場合は遺産分割協議書を作成します。
預金口座の名義変更の手続き
相続人が決まったら、名義変更の手続きを行います。手続き方法は各金融機関によって違うので、それぞれ確認しましょう。
名義預金に相続税はかかる?
では普通の被相続人の銀行貯金ではなく、名義預金の場合は相続税はかかるのでしょうか。
名義預金は被相続人がお金を預けているわけですが、口座の名義は別の人になっているので、一見口座名義の人の財産と認識され、相続税はかからないように思えます。
しかし、名義預金の場合、その名義の人が口座のお金を管理していない場合、あくまで被相続人の財産とカウントされ、相続税がかかってしまいます。ポイントは、名義の人が口座のお金のことを知っている、通帳やカードなどを持っていて、いつでもお金を使えるかどうか、ということです。
もしお金を自由に使えない場合、あくまで被相続人の財産とカウントされてしまいます。
まとめ
銀行貯金は財産の中で最もメジャーなもので、相続税の課税対象となります。
しかし遺産総額が基礎控除額内であれば相続税はかかりません。
また、銀行貯金は被相続人が亡くなると一度凍結されてしまいます。相続人が誰なのか、誰がいくら相続するのかをはっきりさせない限り、凍結解除はできなくなっています。
必要な書類を提出してから凍結解除されるまで1~2週間はかかるので、相続したからといって銀行貯金はすぐに使えるわけではないことを覚えておきましょう。