相続税対策にも色々方法がありますが、その1つに賃貸アパートやマンションを購入する、という方法があります。
大きな金額が動くので、決して気楽な気持ちで始められるものではありませんが、上手く活用すれば節税対策になるだけでなく、子供や孫に不動産収入のある財産を残すことができます。
では、賃貸アパートやマンションがどうして相続税対策になるのでしょうか。また、デメリットなどはないのでしょうか。

賃貸アパートやマンション購入が節税対策になる理由

相続税というのは、相続した財産がいくらなのかによって変わってきます。その相続した財産、というのを決める際、預金や現金などは金額がハッキリしていますが、不動産の場合は購入価格や市場価格で決まるわけではありません。
不動産の場合、土地の評価額や建物の評価額で決めますが、この評価額は市場価格よりも低く設定されています。さらに、賃貸用となると、土地も建物もさらに評価額を下げることができるため、普通に現金を相続するより、相続税を安く抑えることができるのです。

賃貸アパートやマンションの評価額

賃貸アパートやマンションの評価額は、まず土地と建物の評価額で分けて計算します。

土地の評価額

土地の評価額は、まず路線価方式か倍率方式で求めます。
その路線価方式が倍率方式で求めた評価額に借地権割合をかけて、さらに借家権割合をかけます。

借地権割合は、土地に応じて30%から90%とすでに定められていて、借家権割合は一律30%で計算されます。
そこに、賃貸で貸している床の面積の割合をかけます。
つまり、

本来の評価額×(1-借地権割合×借家権割合(30%)×賃貸割合)

で求めます。
そうすると、だいたい本来の時価の6~7割程度に落ち着きます。

例えば、1億円の現金を相続したら1億円に対して相続税がかかりますが、賃貸アパートやマンションを購入すれば、土地は1億円ではなく6,000~7,000万円に対して相続税がかかることになります。

自用地 貸家建付地
評価方法 路線価(または倍率方式) 本来の評価額×(1-借地権割合×借家権割合(30%)×賃貸割合)
時価に対する割合 8割程度 6~7割

建物の評価額

建物の評価額は、固定資産税評価額で決まります。
固定資産税評価額も、本来の時価に比べると4~5割程度低く設定されています。しかし賃貸用の建物の場合、借地権割合と借家権割合、賃貸割合をかけます。

本来の評価額×(1-借地権割合×借家権割合(30%)×賃貸割合)

そうすると、だいたい時価の3~4割程度に落ち着きます。

例えば、先ほど1億円の現金とアパートで比べましたが、5,000万円の土地と5,000万円のアパート(建物)を購入して相続した場合、土地は3,500万円、建物は1,750万円ほどに評価額が下がるため、5,250万円に対して相続税がかかることになります。
1億円に対して相続税がかかるのと、5,250万円に対して相続税がかかるのでは、大きな差ですよね。

自用地 貸家建付地
評価方法 固定資産税評価額 本来の評価額×(1-借地権割合×借家権割合(30%)×賃貸割合)
時価に対する割合 5~6割程度 3~4割

ローンを組むことでさらに相続税対策に

ローンを組むと、財産を計算する時に、ローンの金額は引いて課税対象額を計算することになります。これを債務控除と言います。ローンだけでなく、借金があった場合などもその金額を引いて計算することができます。
つまり、先ほどの例で見てみると、5,000万円の土地と5,000万円の建物を購入した場合、5,250万円に評価額が下がると言いました。このアパートを5,000万円のローンを組んで購入したとします。
そうすると、5,250万円から5,000万円を引いた250万円に対して相続税がかかることになるので、かなり相続税を抑えることができます。
ただ、相続税はそれ以外の財産も合わせた遺産総額に対して計算するので、単純にこのような計算方法になるわけではありません。
また、相続税対策ができるからといって、安易に高額のローンを組むのも危険です。

小規模住宅用地の減額の特例が利用できる

小規模住宅用地の減額の特例とは、住宅用地の評価額を一定の割合で減額してもらえる特例です。つまり、土地だけでなく建物が建っていて、住宅用であれば土地の評価額を下げてもらえます。
賃貸アパート・マンションの場合は貸付事業用宅地等に該当するため、200㎡までであれば1/2に評価額を下げてもらえます。200㎡を超える場合は、超えた分に関してはそれまで通りに計算します。

相続後に収益が得られるメリットも

現金や預金は相続したらそのまま使えるというメリットがありますが、不動産には不動産収益を得られ続けるというメリットがあります。
もちろん、賃貸アパートやマンションの場合は空室になってしまうと収入がなくなるため、もしローンを組んで購入していた場合、そのローンの支払いの負担のほうが大きくなってしまい、かえって相続人に負担をかけてしまうリスクもあります。
また、ローンを組んでいない、もしくはローンが支払い終わっていたとしても、不動産というのは所有しているだけで固定資産税などのお金がかかります。
そのため、必ず収益が得られるという100%の保証はありませんが、うまくいけば継続的な権利収入が得られます。
子供や孫の将来のことを考えて、現金ではなく賃貸アパートやマンションを購入するというのは、節税対策以外のメリットもあるんですね。

賃貸アパートやマンション相続のデメリット

これまでメリットをお伝えしてきましたが、もちろんデメリットもあります。
不動産というのは所有しているだけで、固定資産税、所得税などの税金がかかります。特に、ローンが支払い終わると経費で落とせる金額が減るので、税金が増えてしまいます。
また、税金だけでなく、不動産は所有していると老朽化していきます。それを維持したり修繕するための、維持費用、修繕費用などもかかります。管理を他に依頼するなら管理費用もかかりますし、保険料もかかってきます。
それで、空室がなく収益が上がっていればそこから支払いができますが、もし空室が続くようであれば、収益がないのに支払いの負担だけが残ってしまいます。

もしそんな状態が続き、アパートやマンションを売却したい、と思っても、売り手が見つからない限りアパートやマンションは売ることができません。特に賃貸用であれば、過去の空室率なども含めて査定されます。
あまり空室が長いと、買う方も怖くて買えません。そうなるとなかなか売り手が見つからず、税金や管理費用だけが固定支出になってしまいます。

まとめ

メリットが多い賃貸アパートやマンションの相続ですが、きちんと計画を練って、どんなアパートやマンションを購入するのか決めないと、かえって相続人の負担になってしまうことがあります。
もし不動産を購入して相続税対策をしようと思っているのであれば、きちんと不動産投資に詳しいところに相談し、最悪売却もできるようなアパート、マンションを購入するのがおすすめです。