相続というのはいつどこで発生するか分からないものです。一般的には相続というと、高齢者の方が亡くなり、配偶者の方やお子さんが相続するイメージが強いですが、中には未成年者が相続するようなケースもあります。
未成年者が相続する場合、他の相続と少し手続き方法が違います。また、未成年控除を適用することもできるので、未成年の相続について見ていきましょう。

未成年控除とは?

未成年控除とは、未成年者が相続する場合に適用される控除で、成人するまでの教育費、養育費などが考慮され、相続税の負担を軽くしよう、という目的で用意されている制度です。未成年者の年齢によって控除される金額が変わり、若いほど控除額が増えます。

計算式は下記のとおりです。

{20歳-相続した時の年齢(1年未満は切り捨て)}×10万円

例えば10歳で相続したとしたら、(20-10)×10万円で100万円が控除され、16歳の時に相続したとしたら、(20-16)×10万円で40万円が控除されることになります。

もし控除枠が余り、他の相続人に扶養義務者がいた場合、その人に控除枠を分けることもできます。

未成年控除を受けるための条件

未成年控除を受けるためには、単純に未成年というだけでは受けられず、下記の要件を満たしている必要があります。

1.法定相続人であること

相続人を決める際には、遺言書がない場合、法律によって定められた法定相続人が相続人となります。しかし法定相続人でなくても、遺言書があれば第三者でも相続人になることができます。
しかし未成年控除を受けるためには、法定相続人である必要があります。もし遺言書によって相続人となっている場合は未成年控除は適用できないので注意しましょう。

2.相続が発生した時点で20歳未満であること

未成年控除を受けるためには、相続が発生した時点で20歳未満である必要があります。
相続税の申告は、相続が発生してから10ヶ月以内に行う必要がありますが、相続が発生した時点で20歳未満であれば、申告の時点で20歳を過ぎていても大丈夫です。

3.相続が発生した時点で日本に住所があること

相続が発生した時点で、日本国内に住所がないと未成年控除を受けることはできません。

未成年者が相続する際の手続き方法

未成年者が相続する場合、未成年者は財産に関わる法律行為を自ら行うことができないため、親権者である親が法定代理人として手続きを行う必要があります。
未成年のうちは、何か契約する際も親の同意が必要だったりしますよね。それと同じように、未成年者が相続をする場合、手続きは親が法定代理人となって行う必要があります。

しかし注意したいのが、親も相続人だった場合、法定代理人にはなれないということです。
親も相続人の場合、「利益相反行為」にあたり、法定相続人になることは認められていません。
利益相反行為とは、一方の利益が生じると同時に、自信が代理した他者に不利益が生じることです。

例えば、父が亡くなり母と子供が相続する場合を見てみましょう。子供が未成年者なので、母が法定代理人になるとします。その場合、母が自分に有利な状態で相続の手続きを進めてしまうと、子供に不利益が生じることになります。親子であればあまりないように思えますが、法律上は禁止されています。

そのため、もし親も相続人の場合は、特別代理人といって別の人を代理人にする必要があります。

特別代理人の決め方

親が法定代理人になれないということは、誰かを代理人にしないと遺産協議が進められません。
未成年者が相続し、親も相続人の場合は、特別代理人といって第三者を代理人にする必要があります。

特別代理人は、家庭裁判所によって選任されます。
未成年の住所を管轄する家庭裁判所に、未成年者の相続人の親権者や利害関係のある人が申し立てを行います。特別代理人は、相続に関係ない人であれば誰でもなることができるので、誰を特別代理人にするか候補者を決めておきましょう。
未成年者の親族でも相続人でなければ特別代理人になれますが、親族だと何らかの形で不公平が生じる可能性もあるため、あまりおすすめできません。

申し立てする時は、

  • 申立書
  • 申立人の戸籍謄本
  • 未成年者の戸籍謄本
  • 特別代理人候補者の住民票か戸籍附票
  • 相続した財産が分かる資料

が必要になります。
申し立てに必要な費用は、印紙代800円と、家庭裁判所から書類送付する際に必要な切手代のみとなっています。

未成年者が相続放棄する場合

相続、というと貯金や不動産などを相続するイメージが強いですが、中には借金やローンなど、マイナスの財産を相続することになる場合もあります。
たとえ未成年者であっても、相続放棄をしなければ、借金やローンを相続してしまうことになってしまいます。
ただ、相続放棄も法律行為のため、未成年者が自身で手続きをすることはできません。相続放棄であっても、代理人を立てて手続きすることになります。

相続放棄の場合、普通の相続の手続きと違うところは、親子で一緒に相続放棄する場合に限り、特別代理人の選任が必要ないというところです。プラスの財産がある場合は利益相反が生じる可能性がありますが、相続放棄の場合その心配はないので、相続人である親が法定代理人になることができます。

まとめ

未成年者が相続する場合、未成年者控除を受けることができます。未成年者控除は相続が発生した時の年齢によって控除金額が変わり、若いほど控除額が大きくなります。
また、手続きにおいては、未成年者本人が相続の手続きをすることはできません。親が相続人でない場合は親が法定代理人になり、親も相続人である場合は家庭裁判所に申し立てをして特別代理人を選任し、代理人が手続きをすることになります。

相続する財産がマイナスの場合など、もし相続放棄をしたい場合は、未成年者であっても手続きをする必要があります。
相続放棄の手続きは、親と一緒に相続放棄する場合に限り、特別代理人の選任が必要なく、親が法定代理人となって手続きすることができます。