被相続人が亡くなる前、最期に入院したり病院に通ったりして、医療費がかかるというのはよくあることではないでしょうか。その医療費は相続税を申告する時に控除が適用されるのでしょうか。
医療費控除が適用されるかどうかは、被相続人が亡くなる前に支払っているか、亡くなってから支払われたか、被相続人が支払ったのか、相続人が支払ったのかによって変わってきます。
被相続人が、亡くなる前に支払っていた場合
被相続人が亡くなる前に、自身で支払っていた場合、相続人の準確定申告において控除が適用されます。準確定申告とは、1年の途中で亡くなった方(被相続人)の確定申告を相続人が代わりに手続きすることです。また、全ての人が準確定申告が必要なわけではなく、給与所得の他に20万円以上の収入がある人が対象です。給与所得があり源泉徴収が行われている場合や、高額医療を受けていた場合は準確定申告によって還付金が返ってくることもあります。
相続人が、亡くなる前に支払っていた場合
被相続人が亡くなる前に、相続人が立て替えている場合もありますよね。その場合、生計を一緒にしていたかどうかで少し変わってきます。
例えば親子で生計を一緒にしていたような場合、被相続人の準確定申告で控除を受けてもいいですし、相続人の相続税申告の時に控除を受けてもいいんです。どちらか、より有利なほうを選ぶことができます。
生計を一緒にしていない場合、被相続人の準確定申告のみ控除を受けることができます。相続人の相続税申告の際は控除が受けられないので注意しましょう。
相続人が、亡くなった後に支払った場合
このケースが一番多いですが、被相続人が亡くなった後、相続人が入院費などの医療費を支払った場合です。
この場合は、相続税の申告の時に控除を受けることができます。
医療費はどこまで対象になる?
医療費と一言で言っても、診察代から手術代など様々です。
これらのうち、控除の対象となるのは以下です。
- 医師による診察代
- 治療用の松葉杖や義手、義足など
- 検査代
- 整体、鍼治療、マッサージの費用
- 虫歯治療や歯列矯正代
- 処方箋をもらった薬代
- 通院や入院にかかった交通費
- 入院時の食事代やベッド代
基本的には病院でかかる費用、治療にかかる費用は対象となります。
ただ、気をつけなければならないのが、被相続人の入院の際、被相続人の希望で個室に入った場合です。その場合、入院の際に『差額ベッド代』が生じることになります。この差額ベッド代が、医師の指導の元で個室に、ということであれば控除の対象となりますが、被相続人が『他の人と同室は嫌だから個室がいい』という理由で個室にしていた場合、差額ベッド代は控除の対象にはなりません。
また、松葉杖や車椅子など、医師の指導の元治療に必要であれば控除の対象になりますが、医師から指導があったわけではなく被相続人の意思で購入している場合、控除の対象になりません。
ポイントはどちらも、医師の指導の元、治療用であるかどうか、ということになります。
介護費用も課税控除対象となる?
被相続人が高齢の場合、入院費や治療費だけでなく、介護費用がかかることも多いでしょう。
介護費用も、基本的に医療費と同じく課税控除対象となります。
デイサービスやヘルパーの利用料、介護施設への支払いも対象となります。
また、デイサービスに通うための交通費、リハビリ施設に通う交通費も対象となります。
介護保険サービスを利用している場合は、介護サービス利用料の自己負担分や、保険の限度額を超えて利用した自己負担額が控除の対象になります。
こちらの介護費用も、被相続人が亡くなる前に、被相続人自信が支払いをしていた場合、準確定申告において医療費控除を受けることができます。
まとめ
医療費や介護費用など、被相続人が高齢の場合はほとんど避けて通れないものです。
ただ、被相続人が生前に支払っていようと、被相続人が亡くなってから相続人が代わりに支払おうと、どちらも控除を受けることができます。
被相続人が生前に支払っていた場合は、準確定申告において控除が利用できますし、被相続人が亡くなってから相続人が支払った場合は、相続税において控除が利用できます。
知らないと、控除を利用せず、本来よりも税金が高くなってしまう可能性があるので、きちんと確認してみましょう。
どの費用がどこまで控除対象内か分かりづらい、という方は、一度税理士に相談してみるのがおすすめです。