土地を相続したけど、相続税がいくらかかるかいまいち分からない、という方は多いのではないでしょうか。というのも、土地の相続税を計算する時、例えば土地の評価額がいくらで、何%税率をかけて相続税はいくらです、というような単純計算では出せないからです。相続税を計算する時は、土地だけでなく他の遺産も一回合わせてから、全体の遺産に対して相続人が誰かを明確にし、相続税の計算をしていきます。そのため、土地の評価額だけで、相続税がいくらになるかは簡単には出せないんですね。
では、実際に土地も相続した場合、どのように相続税が計算されるのでしょうか。
まずは土地の評価額を明確に
土地の評価額を決める方法は2種類あります。
ざっくりですが、と都市部や住宅が多い場所は路線価方式、田舎や山林、農地が多い場所は倍率方式で計算します。
1. 路線価方式
路線価とは、国税庁が定めた土地の値段のことで、路線(道路)に面する住宅1平方メートルあたりの評価額です。路線価は毎年変わり、国税庁のホームページや各税務署で閲覧することができます。
計算式は、
路線価×土地の面積
となります。
補正が加わることも
路線価方式では、上記の計算式が最もシンプルな計算式になりますが、土地というのは色々な形があるので、補正が加えられることもあります。
例えば、道路から少し距離がある場合、その分利用しにくいと判断され、評価額は下がります。その場合は、奥行価格補正率をかけることになります。奥行価格補正率は、国税庁のホームページで確認することができます。
他には、正方形や長方形ではなくいびつな形をしている場合、不整形地補正率をかけて評価額を下げます。間口の狭い住宅やがけ地なども補正率をかけて評価額を下げることになります。
2.倍率方式
毎年送られてくる、固定資産税評価明細書に記載されている土地価額に、1.14をかけた金額が土地の評価額になります。何故1.14をかけるのかと言いますと、土地の固定資産税の評価額は時価の70%に設定されていますが、相続税の評価額は80%に設定されているため、差額の10%分を埋めるためです。
固定資産税評価額が分からない場合は、都税事務所や市役所などで確認することができます。
遺産総額を明確に
土地の評価額を割り出せたら、それ以外の遺産総額も明確にしていきます。
遺産としてカウントされるものとして、
・預貯金、現金、有価証券などの金融資産
・貴金属、宝石、自動車などの動産
・ゴルフ会員権、著作権などの権利
などがあります。
その他、みなし相続財産として、死亡保険金や死亡退職金などがあります。みなし相続財産とは、被相続人が亡くなることで得られ、お金に換えられるものです。財産という意味では他の預貯金や現金などと変わりませんが、被相続人が亡くなることでしか得られない、という点が違います。
遺産にはこれらのプラスのものだけでなく、マイナスの財産と呼ばれているものがあります。それは、主に借金やローン、葬儀費用です。プラスの財産を全て足したら、借金や葬儀費用を引いて、遺産総額を割り出します。
遺産総額をもとに相続税を計算
遺産総額が割りだせたら、相続税の計算をします。
まず、相続税には基礎控除というものがあり、基礎控除の金額いないであれば相続税はかかりません。
基礎控除の計算式は、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
となります。
法定相続人や基礎控除のついての詳細はこちら
法定相続人は、実際に相続する人と必ずしも一致するわけではなく、あくまで法律で定められた相続人のことです。
この法定相続人の数が多いほど基礎控除額は大きくなり、1人であれば3,600万円、2人であれば4,200万円、3人であれば4,800万円が基礎控除額となり、それを超えた分にだけ相続税がかかることになります。
基礎控除額を引いた金額が、課税遺産総額となります。
課税遺産総額が出せたら、次は法定相続分に基づいて税率をかけていきます。
法定相続分とは、法律によって定められた相続の取り分のことです。
例えば、配偶者と子供2人が相続する場合、配偶者が1/2、子供がそれぞれ1/4ずつとなります。配偶者と母親が相続する場合、配偶者が2/3、母親が1/3となります。
それぞれの取り分によって、課税遺産総額を分割したら、下記の表に基づいて相続税を計算します。
法定相続分に応ずる取得額 税率 控除額
1000万円以下 10% 0円
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円
課税遺産総額が5,000万円、配偶者と子供2人で相続する場合、
配偶者の法定相続分は5,000万円×1/2=2,500万円、税率は15%で控除額が50万円なので、2,500万円×0.15-50万円=325万円となります。
子供は1人あたり5,000万円×1/4=1250万円の法定相続分となり、税率は15%で控除額が50万円なので、1,250万円×0.15-50万円=137万5,000円となります。
相続税の合計は、325万円+137万5,000円+137万5,000円=600万円になります。
相続税の総額が割りだせたら、それぞれの相続人に相続税を割り振り、各相続人によって控除が利用できれば控除を利用します。
小規模宅地等の特例で土地の評価額を下げる
小規模宅地等の特例とは、住んでいる住宅を相続によって手放さなくても住むように設けられた特例で、土地の評価額を80%下げることができます。
被相続人と生前一緒に住んでいた、もしくは事業用に利用していた住宅に限り、投資用のマンションや別荘などは該当しません。
この小規模宅地等の特例が相続税に影響するか例を見てみましょう。
被相続人=夫、相続人が配偶者の妻、子供2人の場合
住宅の評価額が4,000万円、預貯金が1,000万円の合計5,000万円が遺産総額だとします。
小規模宅地等の特例を利用しない場合、5,000万円に対して基礎控除を利用し、先ほどの計算のように法定相続分をもとに相続税を計算すると、相続税の合計は600万円になります。
しかし小規模宅地等の特例を利用すると、住宅の4,000万円の評価額が80%減額され、800万円になります。この800万円と預貯金1,000万円の合計1,800万円が課税遺産総額となります。基礎控除額が4,800万円で、課税遺産総額が基礎控除内なので、相続税は0円になります。
まとめ
土地を相続する、となるとどれくらい相続税がかかるのか不安…家にそのまま住み続けられるのか心配…という方は多いです。
ただ、土地の相続税については他の遺産の金額や、相続する人数、被相続人と一緒に住んでいた土地かどうか、ということも関わってくるため、一概にだいたいいくら、ということは計算しづらいものです。相続税がいくらかかるのか、土地を売却しなければならないかどうか知りたい、という方は一度税理士に相談してみるのがおすすめです。