被相続人が亡くなった後、お通夜やお葬式などで香典をもらいますよね。
その香典を相続税の対象にするのかどうか、気になるところですよね。被相続人が頂いたものだから、遺産のようにも思えます。
香典に、相続税はかかるのでしょうか。

香典は非課税?

香典、というのは、被相続人のお通夜やお葬式で頂いたものだから、被相続人の財産に含めたほうがいい、というイメージもありますよね。しかし、香典は参列者が通夜や葬儀の費用を一部負担している、と考えられていて、被相続人の遺産とは扱われません。
遺族への贈与とされているので、相続税がかかることはありません。

贈与税がかかる?

被相続人の遺産ではなく、遺族への贈与とされているのであれば、贈与税などがかかるのでは、と思いますよね。
贈与税とは、贈与した財産すべてに税金がかかるとされていますが、財産の性質や目的によっては非課税となるものもあります。
香典については、贈与税法に下記のように記されています。

相続税法基本通達21の3-9
個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞い等のための金品で、法律上贈与に該当するものであっても、社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないことに取り扱うものとする。

つまり、香典については非課税とされていて、贈与税がかかることはありません。

所得税はかかる?

所得税も、基本的にはかかりません。
通常、法人から個人へ贈与が合った場合、所得税がかかることになっています。被相続人や遺族の関係で、法人から香典が贈られることもあるでしょう。その場合、本来であれば法人から個人へ贈与があったことになり、所得税がかかりますが、所得税に関しては所得税法によって非課税の対象になっています。

所得税法基本通達
9-23 葬祭料、香典又は災害等の見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、令第30条の規定により課税しないものとする。

高額の香典の場合は税金がかかる?

贈与税も所得税も、基本的には非課税の対象となっていますが、常識の範囲を超える金額の香典の場合、少し話が変わってきます。多少高額であっても、被相続人、または喪主の地位によっては「社会通念上相当と認められる」こともありますが、あまりにも高額な場合は注意が必要です。
気になった方は、担当の税理士に相談するようにしましょう。

香典返しの費用は相続税の計算上控除される?

相続税の計算をする際、葬儀費用などは控除の対象となっています。つまり、葬儀にかかった費用は遺産の金額から引いて、引いた金額に対して相続税がかかることになります。
では香典返しの費用は控除の対象になるのでしょうか。

残念ながら、香典返しは、控除の対象となる葬儀費用には含まれません。
控除の対象となる葬儀費用に含まれるものは、下記のとおりです。

葬式費用になるもの 葬式費用にならないもの
  • お通夜、告別式にかかった費用
  • 葬儀に関連する料理代
  • 火葬料、埋葬料、納骨料
  • 遺体の搬送費用
  • 葬儀場までの交通費
  • お布施、読経料、戒名料
  • 運転手さん等への心付け
  • 香典返し
  • 生花、盛籠等
  • 位牌、仏壇、墓石の購入費用
  • 法事(初七日、四十九日)に関する費用

どちらかというと、被相続人が亡くなった際に必ずかかる費用(告別式や葬儀費用)などは控除の対象となり、香典返しなどは遺族の判断によって金額もかなり自由に決められるものは控除の対象にはならないというイメージです。

香典帳はとっておくべき?

香典を頂い方は香典帳に氏名や金額、香典返しをするための住所などを記入していきます。
相続税の税務調査では、この香典帳を見せてほしいと言われることがあります。被相続人と関係のあった会社などの情報が載っているため、税務調査で参考になるためです。
香典帳はとっておくようにしましょう。

まとめ

香典は、基本的に相続税だけでなく、贈与税、所得税ともに非課税の対象となっています。
そのかわり、相続税の申告の際、控除の対象からは外されます。
ただ、社会的な常識を超える金額の場合、贈与税と所得税がかかる場合があるので、税理士に相談するようにしましょう。