遺産を相続することになったけど、相続税はどれくらいかかるのか、いくらからかかるのか気になる方も多いのではないでしょうか。実際に、相続税を支払っている人は全体の1割と言われていて、多くの人は相続税を支払わずに住んでいます。
しかし相続税というのは、金額がいくらだから支払わなくていい、という単純計算では求められないのです。そこで、相続税の計算の仕方、どんな時に相続税がかかるのか詳しく見ていきましょう。
相続税は基礎控除が利用できる
相続税の計算には、まず遺産総額を正確に把握する必要があります。預貯金や現金などだけでなく、土地や株、ゴルフ会員権なども遺産の総額に含めます。さらに、こういったプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産があれば引く必要があります。
そうして遺産の総額を明確にしたら、次は基礎控除額を割り出します。
基礎控除額は法定相続人の数による
基礎控除額の計算式は、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
になります。
法定相続人とは、法律によって定められた相続人のことです。法定相続人が1人であれば基礎控除額は3,600万円、法定相続人が2人であれば4,200万円、法定相続人が3人であれば4,800万円になります。
法定相続人には優先順位が決められていて、高い方が法定相続人となります。
順位1.子供、孫
順位2.両親、祖父母
順位3.兄弟姉妹
配偶者がいる場合はここに配偶者がプラスされます。
例えば、遺族に配偶者、子供2人、母親がいた場合、法定相続人は配偶者と順位1の子供2人、合計3人になります。
遺族に両親と妹がいた場合、法定相続人は両親の2人になります。
このように、順位の高い方と、配偶者がいた場合は配偶者が法定相続人になります。
遺産総額がこの基礎控除額内であった場合、税金はかからず相続税が0円ということになります。逆を言えば、基礎控除額を超えてからはじめて相続税がかかることになります。
そのため、相続税がいくらからかかるか、という金額を決めるとしたら、この基礎控除額になります。
基礎控除額を超えても各控除が利用できます
では基礎控除額を超えたら必ず相続税がかかるのかというとそうではありません。基礎控除以外にも控除が用意されているため、各控除を利用することで相続税を減額したり、相続税を0円にできる場合があります。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、被相続人と住んでいた住宅や一緒に事業を行なっていた土地があれば、一定の要件を満たした場合最大80%まで土地の評価額を下げることができる特例です。
被相続人と住んでいたり事業をしていた場合、被相続人がなくなった後も遺族が住む場所や仕事を手放さなくてもいいように設けられた特例です。
例えば、土地の評価額が5,000万円、他の財産が2,000万円の場合、小規模宅地等の特例が利用できなければ、この5,000万円と他の財産2,000万円を合わせて7,000万円が遺産総額となります。基礎控除額が3,600万円の場合、基礎控除額を差し引いた3,400万円に税金がかかり、460万円が相続税になります。
対して小規模宅地等の特例を利用した場合、5,000万円の土地の評価額が1,000万円になり、他の財産2,000万円を合わせて3,000万円の遺産総額があることになります。基礎控除が3,600万円の場合、基礎控除内におさまるため、相続税はかからないことになります。
同じ財産でも、小規模宅地等の特例を利用するかどうかで、相続税がかかるかかからないかまで変わってくることがあるんですね。
配偶者控除
配偶者控除は、配偶者が相続した場合、相続した金額が1億6,000万円まで、もしくは法定相続分までであれば相続税がかからないという控除です。
法定相続分というのは、法律によって定められた遺産の取り分のことです。
配偶者と子供で相続する場合、配偶者は財産の1/2、配偶者と父母または祖父母が相続する場合、配偶者は財産の2/3、配偶者と兄弟姉妹が相続する場合、配偶者は1/4が取り分と定められています。
ただ、遺言や遺産分割協議によって法定相続分より多く相続することもあるかと思います。その場合は、配偶者の取り分が1億6,000万円までであれば、配偶者は相続税がかからないんです。
例えば、配偶者と子供1人が課税遺産総額5,000万円(基礎控除額を引いた遺産総額)を相続する場合、配偶者と子供の法定相続分はそれぞれ2,500万円になります。2,500万円の税率は15%、控除額が50万円なので、2,500万円×15%-50万円=325万円になります。
この法定相続分に従って相続する場合、子供は325万円の相続税を支払うことになりますが、配偶者は1億6,000万円までは控除されるので、相続税は0円になります。また、もし1億6,000万円を超えた場合でも、この法定相続分の範囲内であれば相続税はかかりません。
そのため、この配偶者控除を上手く利用すれば、いったん配偶者が相続する分を多くし、全体の相続税を抑えることもできます。
相続税早見表
配偶者と子供が相続する場合の相続税早見表(配偶者控除も利用)
遺産総額 配偶者 配偶者 配偶者 配偶者
子供1人 子供2人 子供3人 子供4人
5,000万円 40万円 10万円 0円 0円
6,000万円 90万円 60万円 30万円 0円
7,000万円 160万円 113万円 80万円 50万円
8,000万円 235万円 175万円 138万円 100万円
9,000万円 310万円 240万円 200万円 163万円
1億円 385万円 315万円 262万円 225万円
2億円 1,670万円 1,350万円 1,217万円 1,125万円
子供だけが相続する場合の相続税早見表
遺産総額 子供1人 子供2人 子供3人 子供4人
5,000万円 160万円 80万円 20万円 0円
6,000万円 310万円 180万円 120万円 60万円
7,000万円 480万円 320万円 220万円 160万円
8,000万円 680万円 470万円 330万円 260万円
9,000万円 920万円 620万円 480万円 163万円
1億円 1,220万円 770万円 630万円 225万円
2億円 4,860万円 3,340万円 2,460万円 2,120万円
金額が大きくなればなるほど、配偶者控除があるかないか、大きく影響してくるのが分かりますね。ただ、実際は小規模宅地等の特例を利用したり、その他未成年者控除や障害者控除なども利用することができるため、あくまで目安になります。
まとめ
相続税の計算は、遺産総額だけでなく、相続する人によって基礎控除額が変わってくるため、遺産がいくらだったら相続税がかかる、というような簡単な計算で求めることはできません。配偶者が相続する場合は特に、配偶者控除が利用できるため、配偶者は最低でも1億6,000万円までは相続税を支払わなくていいことになります。
そのため相続税の金額は、相続する人数は何人なのか、誰が相続するのか、ということに大きく影響されます。
実際に相続税がいくらかかりそうか、相続税を支払わずに済む控除の利用方法が知りたい、という方は一度税理士に相談してみるのがおすすめです。