被相続人名義で借りていた住宅があり、住宅ローンの支払いがまだ終わっていないとします。このローンが終わっていない状態で被相続人が亡くなってしまった場合、相続税はどうなるのでしょうか。また住宅ローンはどうなるのでしょうか。そのまま住宅に住み続けることはできるのでしょうか。

住宅ローンがあると、相続税は相殺される?

相続税を計算する時、まずは財産の総額を割り出します。財産の中には、貯金や土地、株式などプラスの財産もあるでしょうし、逆に借金やローンなどマイナスの財産もあるでしょう。住宅ローンはマイナスの財産になるので、プラスの財産から差し引いた金額が、課税対象額となります。
例えば、貯金が500万円、株式が200万円あったとして、住宅ローンが残り600万円だったとします。そうすると、500万円+200万円-600万円=100万円が課税対象額となります。
マイナスの財産には、住宅ローンだけでなく、

  • 事業の買掛金
  • 事業の未払金
  • 医療費の未払金
  • 金融機関からの借入金
  • クレジットカードの未払金

等がります。また、葬儀費用も財産ではないですが、一般的に被相続人の財産から費用を捻出することが多いため、財産から差し引くことができます。

葬儀会社に支払った費用や、通夜、告別式に係わった飲食代、お手伝いしてもらった人への心付けなどが対象となるので、差し引くようにしましょう。

住宅ローンが払えない場合は?

では、例えばAさんが住宅ローンを組んで、専業主婦の奥さんとお子さん2人と住んでいたとします。住宅ローンがまだ残っている状態でAさんが亡くなった場合、専業主婦だった奥さんは、住宅ローンを払えなくなってしまいました。この場合、奥さんとお子さんは家を出ていかなくてはならないのでしょうか。実は、住宅ローンが払えなくなった場合でも、「団体信用生命保険」に加入していれば住み続けることができるんです。

団体信用生命保険とは?

団体信用生命保険とは、ローンの借主がもし亡くなった時や、高度の障害でローンの返済ができなくなった時、ローンの残りを生命保険会社が全て支払ってくれるというものです。
通常、住宅ローンを組む際には団体信用生命保険の加入がついてくるので、あまり心配しなくても加入している場合がほとんどです。加入率は、住宅ローンを組んでいる人の95%とも言われています。

この団体信用生命保険金に加入していれば、住宅ローンが払えなくなったとしても、ローンを払う必要もありませんし、家を出て行く必要もありません。

団体信用生命保険金に気が付かずにローンを返済していたら?

もしこの団体信用生命保険金のことを知らずに、ローンの返済を続けていた場合、どうなるのでしょうか。
団体信用生命保険金のことは、だいたい保険会社や金融機関から知らされることはありません。自分から問い合わせれば答えてくれますが、金融機関から「団体信用生命保険金に加入してるので、もう払わなくていいですよ」というような連絡がくることはありません。

そのため、気が付かずにローンをずっと返済してしまう人もいます。
その場合は、返金手続きをすれば支払った分は戻ってきます。もし被相続人が亡くなった後もローンを支払っている場合は、各金融機関に問い合わせてみましょう。

団体信用生命保険金でローン返済した場合の相続税

もし団体信用生命保険に加入しておらず、住宅ローンが残った場合、マイナスの財産として相続税の課税対象額を差し引くことができます。
しかし団体信用生命保険金を受け取ってローンがなくなった場合、財産から差し引くことはできません。かわりに、プラスの財産になることもなく、相続税の計算上考慮しないということになります。

団体信用生命保険金を受け取るかどうかで相続税の計算も変わってくるので、被相続人が亡くなって住宅ローンが残った場合、どうするか早めに決めて手続きするようにしましょう。

まとめ

被相続人が亡くなって住宅ローンが残った場合、もし団体信用生命保険に加入していればローンの残債は全て生命保険会社が負担してくれます。その場合、相続税の計算上はプラスでもマイナスもなく、考慮しないことになります。
住宅ローンを組んでいる人の95%が団体信用生命保険に加入しているので、ほとんどの人はこの手続きになるでしょう。
もし団体信用生命保険に加入していない場合、ローンは残りますが、相続税は財産の課税対象から差し引くことができるので、相続税は抑えることができます。