家を相続したけど、相続税が高い…
被相続人と同居していれば小規模宅地等の特例が適用できるけど、同居していなければ無理なのか…
そう思って諦めている方も多いのではないでしょうか。

しかし実は、家なき子特例という特例もあるんです。

ただ、この家なき子特例は平成30年度に改定され、条件が少し厳しくなりました。
そこで、もともと家なき子特例はどのような特例だったのか、改定でどのように変わったのか見ていきましょう。

家なき子特例とは?

家なき子特例とは、そういった名前の特例があるわけではなく、業界用語のようなものです。
簡単に説明すると、『被相続人に配偶者や同居している人がいない場合、3年以上持ち家に住んでいない、つまり賃貸に住んでいる親族が相続すれば評価額を80%安くしましょう』
というような内容です。

例えば、被相続人の配偶者(例えば旦那さん)が既に亡くなっていて、被相続人が1人で住んでいた場合、子供が持ち家ではなく賃貸に住んでいたとしたら、被相続人が住んでいた家む、ということも考えられますよね。
賃貸だけでなく、社宅や寮も特例の適用内です。

もし家なき子特例がないと、被相続人の家に住みたいけど、相続税が高すぎて結局家を売却しなければ相続税が支払えない…ということになりかねません。
家なき子特例はそのような家なき子を救済するために作られた特例です。

具体的にどのような条件だと適用される?

では具体的に、家なき子特例が適用されるのは、どんな条件が揃った時でしょうか。
平成30年度に改定される前の条件を見てみましょう。

1.被相続人に配偶者と、同居していた人がいない

被相続人に配偶者や同居していた人がいない、というのは、言い換えれば配偶者がすでに亡くなっている場合のことを指します。
配偶者が既に亡くなっていて、同居していた人がいない、つまり被相続人が1人で住んでいたということになります。

少し分かりにくいですが、同居していた人がいない、配偶者は生きているけど同居していないという場合は適用されません。
あくまで配偶者は亡くなっているのが前提で、さらに他に同居している人がいない、というのが条件になってきます。

2.3年以上、自分の持ち家に住んでいない

相続人が、相続が発生する3年前から持ち家には住んでなくて、賃貸マンションやアパートに住んでいるのも条件です。
よく間違えられるのは、投資用の不動産を持っているけど本人は持ち家ではく賃貸に住んでいる、という状態です。
こちらは、家なき子特例を適用することができます。あくまで本人が持ち家に住んでいない、というのが条件です。

気をつける点としては、例えば母親が亡くなったAさん(女性)が、本人名義の不動産は持っていないけど、旦那さんの持ち家に一緒に住んでいる場合です。
よくある場合ですが、この場合は家なき子特例を適用することはできません。

持ち家というのは本人というより、夫婦単位で考えることになるので、自分名義でなくても旦那さんや奥さんの名義の場合は条件に当てはまりません。

3.相続してから10ヶ月は住むこと

相続してしばらく住むけど、10ヶ月以内のその家を売却してしまう場合は家なき子特例を適用することはできません。
では10ヶ月住んだらすぐに売却してもいいのか、というと、あまりおすすめできませんが法律上は問題ありません。

改正後の家なき子特例

今までの家なき子特例であれば、例えば被相続人の子供たちは持ち家に住んでいるから特例を受けられないけど、孫が相続すれば特例を受けられるため、孫が相続して家なき子特例を受けよう!と節税対策することができました。
他にも、孫も持ち家を買ってしまっていた場合、その家を親族の誰かの名義に変更し、持ち家がないことにして特例を受ける、という方法もありました。

しかし、家なき子特例は、もともと持ち家がなく、相続税が高くて困っている人のために作られた制度です。
それを利用して節税対策する人が多かったため、条件が以下のように改正されて少し厳しくなったのです。

① 持ち家に居住していない者に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の範囲から、次に掲げる者を除外する。

イ 相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者

ロ 相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者

どういうことかと言いますと、『イ』は、あなた自身が家を持っていなくても、3親等以内の親族が持っている家や、会社で持っている家に住んでいる場合は家なき子とは認めません、ということです。
これまでは持ち家ありなしの判定は、夫婦単位で行われていましたが、それが3親等以内の親族までに広げられたんです。
そのため、孫が持ち家をいったん名義変更したとしても、それが3親等以内の親族であれば家なき子特例は適用することができなくなったのです。

『ロ』は、昔自分の持ち家だった家を誰かに買い取ってもらい、そこに賃貸としてまた住んでいる状態のことは、家なき子とは認めません、ということです。
これによって、すでに持ち家を買った人はどんな方法を使っても、家なき子特例を受けることができなくなりました。
『イ』の条件だけであれば、3親等以内ではなく、知り合いの人や会社に持ち家を買い取ってもらって、そこに賃貸で住むという方法がありますが、この『ロ』によってそれもだめになりました。

この改正には経過措置が講じられるようです

この改正は平成30年度に行われましたが、改正に経過措置が講じられ、平成30年3月31日までに旧家なき子特例の条件を満たしている場合は、平成32年3月31日までに発生した相続に限り、家なき子特例が認められることになりました。

この経過措置によって家なき子特例を諦めていた人も受けられるかもしれないので、気になった方は早めに税理士に相談してみるのがおすすめです。

まとめ

家なき子特例はもともと、被相続人と同居していない、かつ持ち家がない相続人が相続後に相続税で困らないように作られた制度でした。
しかし節税対策のために利用する人もいたため、税法が改正され、節税対策として利用するのは厳しくなりました。

持ち家を相続する場合、資産価値が高い家だと相続税も高くなってしまうため、少しでも節税できないか気になりますよね。

ただ、相続する状況によって、どんなことをしたらいいのか、というのはケースバイケースになってきます。

被相続人が亡くなる前に、一緒に同居して小規模宅地等の特例を適用したほうがいいのか、経過措置が講じられている間に家なき子特例を適用したほうがいいのか、持ち家の評価額や他の資産の額、相続人の数などによっても変わってきます。

できるだけ相続税を抑えたい、という方は、一度税理士に相談してみるのがおすすめです。