相続税には様々な控除が用意されていますが、相続に障害者がいる場合、障害者控除というものを適用することができます。
障害者控除を受けるためには、どのような条件を満たしている必要があるのでしょうか。また、障害者控除ではいくらくらい控除されるのでしょうか。

障害者控除とは

障害者控除とは、相続人の中に障害者がいる場合、相続税を一定の金額控除してもらえる制度です。
間違われやすいですが、被相続人(故人)が障害者であっても障害者控除は適用されず、あくまで相続人が障害者の場合、適用される控除です。
相続人が障害者の場合、その後の生活に負担がかかりやすく、その負担を軽減するために設けられています。

障害者控除では、障害者ならだれでも控除が適用されるわけではなく、一定の条件を満たすことが必要です。

障害者控除を受けるための条件

1.障害者であること

1つ目の条件は、相続人が障害者であることです。
障害者といっても様々な種類がありますが、相続税の障害者控除が適用される障害者は、税法で定められています。
また、税法上、障害の大小によって「一般障害者」と「特別障害者」の2種類が定められています。特別障害者のほうが障害が重く、その分控除額が大きくなっています。

一般障害者

精神保健指定医等により知的障害と判断された方で、特別障害者に該当しない
身体障害者手帳上の障害等級が3級~6級に方
精神または身体に障害のある65歳以上の方で、市区町村等の認定を受けている特別障害者に該当しない方

特別障害者

精神保健指定医等により重度の知的障害者と認定された方
身体障害者手帳上の障害等級が1級または2級の方
寝たきりの状態など完全に介護を必要とする方
精神または身体に障害のある65歳以上の方で、市区町村等の認定を受けている特別障害者に該当する方

2.日本在住であること

2つ目の条件は、相続人が日本在住であることです。
もし海外に在住の方は、基本的には対象になりません。ただ、下記の条件を満たす場合は、海外に在住であっても障害者控除を受けることができます。

・日本国籍を有している
・故人もしくは相続人のいずれかが、相続開始前5年以内に日本国内に住所を有していたことがある

3.法定相続人であること

3つ目の条件は、障害者控除を受ける人が、法定相続人であることです。
法定相続人とは、実際に相続する人とは関係なく、法律によって定められた相続をする権利のある人です。遺言書などがなければ基本的にこの法定相続人が相続することになりますが、遺言書によって相続人が指定されている場合は、法定相続人と実際の相続人が異なる場合があります。
法定相続人には優先順位があり、高い人から順に法定相続人になります。
1.子供、孫
2.両親、祖父母
3.兄弟姉妹
子供がいる場合は子供が、子供がいない場合は孫が、子供も孫もいない場合は両親が、という風に、優先順位が高い人が法定相続人となります。
配偶者はこの順位に関係なく、必ず法定相続人となります。

4.障害者である相続人が遺産を相続すること

障害者である相続人が1円も遺産を相続しない場合、障害者控除を受けることはできません。
もし障害者である相続人が遺産を相続する場合、控除しきれなかった分の障碍者控除は、他の相続人に適用することができます。
しかし、障害者である相続人が相続しない場合は、他の人が障害者控除を受けることはできないので、もし障害者控除を受けたい場合は1円でも遺産を相続することです。

障害者控除ではいくら控除される?

障害者控除では、一般障害者と特別障害者で控除される金額が違います。
一般障害者の場合、控除される金額は、
(85歳-相続時の障害者の年齢)×10万円
になります。
特別障害者の場合、控除される金額は
(85歳-相続時の障害者の年齢)×20万円
になります。

例えば相続人が一般障害者で、40歳の時に相続した場合、
(85-40)×10万円=450万円
が控除額になります。

相続人が特別障害者で、55歳の時に相続した場合、
(85-55)×20万円=600万円
が控除額になります。

障害者控除は他の相続人(扶養義務者)に分けることができる

もし障害者である相続人の相続額が400万円、控除額が600万円で、控除額を使いきれなかったような場合、他の相続人(扶養義務者)が残った200万円分の控除額を利用することができます。

扶養義務とは、高齢や病気、障害などによって経済的に自立できない人を支援する義務のことを言います。
扶養義務者とは、障害者である相続人から見て3親等内の配偶者、子供、孫、両親、祖父母、兄弟などで、家庭裁判所が扶養義務を負わせた人のことです。

もし相続人が2人以上いて、1人が障害者控除を受け、控除枠が余った場合はこの扶養義務者である相続人が余った分を利用できます。

例えば、兄弟であるAさんとBさんが遺産を相続したとして、Aさんは障害者で障碍者控除を利用するとします。
AさんもBさんも相続した遺産の金額が同じで、それぞれの相続税が400万円だとします。
Aさんの障害者控除額が600万円だとして、Aさんは相続税400万円-控除額600万円で、相続税は0円になります。
しかし、200万円分、使いきれなかった控除額があります。この控除額を、Bさんが利用することができます。
Bさんは相続税400万円-残った控除額200万円=200万円、が相続税になります。

障害者控除を受ける際の注意点

障害者控除を受ける際は、申告書に第6表「未成年者控除・障害者控除額の計算書」を作成したうえ、障害者であることを証明するため、障害者手帳のコピーもしくはその他該当する障害者であることを証明できる書類を添付して提出します。

また、過去に障害者控除を受けている場合、控除額が以下のように減額されます。

一般障害者の場合

(85歳-今回の相続時の年齢)×10万円
もしくは
(85歳-最初に控除を受けた年齢)×10万円-控除額の合計
のどちらか少ないほうが適用されることになります。

特別障害者の場合

(85歳-今回の相続時の年齢)×20万円
もしくは
(85歳-最初に控除を受けた年齢)×20万円-控除額の合計
のどちらか少ないほうが適用されることになります。

例えば、1回目の相続が40歳の時で、2回目の相続が50歳の時だとします。
前回300万円の控除を利用していたとしたら、

(85歳-50歳)×10万円=350万円
もしくは
(85歳-40歳)×10万円-300万円=150万円

で、少ないほうの150万円が今回の控除額になります。

まとめ

相続人の中に障害者がいる場合、障害者控除を利用することができます。
その後の生活において、負担を軽減しようという目的で設けられています。
控除される金額は、一般障害者と特別障害者で変わってきますが、相続税が0円になることもあります。また使いきれなかった控除額があり、相続人に扶養義務者がいる場合、控除額を分けることもできます。
きちんと利用すれば相続税をグッと抑えることができるので、障害者がいる場合は利用するようにしましょう。