遺産を相続したらまとまったお金や不動産を相続することになり、手元にお金や資産が増えることになります。
そうすると、確定申告をしたり年末調整をする必要があるのかな、と心配される方もいらっしゃいます。
では実際に遺産を相続したら、確定申告や年末調整をする必要はあるのでしょうか。相続税との関係についても見ていきましょう。
年末調整、確定申告とは?
ではそもそも、年末調整や確定申告とは何のために行うのでしょうか。
年末調整とは、企業などに勤めていてお給料をもらっている人が年末に行う、所得是の調整のことです。所得税は自動で給料やボーナスから引かれていますが、それはその年の所得税がこれくらいになるだろう、という概算で引かれています。それを年末に、本来納めるべき金額をはっきりさせ、調整するのが年末調整です。11月末ごろから年末にかけて、勤務先から書類が配られるので、記入して提出します。
確定申告とは、自営業などで年末調整をしない人が行う所得税の手続きで、毎年1月1日から12月31日分までの所得を、指定の期間内に申告し、納税します。年末調整をする人でも、副収入があったり医療費控除などを受けたい人は確定申告もします。
相続と所得は別物
遺産を相続したからといっても、相続と所得は全く別物として扱われます。
所得とはその人が働いて得たお金のことです。株式や不動産による収入は実際に労働しているわけではないかもしれませんが、税務上は所得としてカウントされます。
一方相続とは、亡くなった人から財産をもらったと見なされるので、働いて得たお金とは別になります。家族として、被相続人の財産形成に協力はしているでしょうが、税務上では所得とは別のものとして扱われます。
どちらもお金や財産を得ることには変わりありませんが、その経緯が大きく違うので課税される税金も変わってきます。
そもそも相続税は、「富の再配分」を目的とされています。もし相続税がなければ、先祖の財産を苦労なく手にし、その財産が生み出す不労所得で一生暮らし、それをまた子供に相続して…という風に、ずっと裕福なままです。もちろん今でもそういう人たちもいますが、相続税がなければもっとその人数は多いでしょう。
そうやってお金持ちの人たちが富をずっと持ち続けていると、貧乏な人はなかなか立場が逆転しません。そのため、棚から牡丹餅的な相続の財産は、相続税が課せられるのです。
対して所得とはその人が労働によって得たお金なので、相続とは区別されています。
扶養を外れることもない?
収入がない、もしくは年収が一定の金額までの主婦の方は、税金が控除されます。税金だけでなく、社会保険も一定の金額以上稼いでしまうと、扶養を外れて旦那さんとは別に、妻自身が支払う必要が出てきます。
年間98万円を稼ぐと住民税が課せられ、103万円を稼ぐと所得税、130万円を超えると社会保険料が課せられることになります。パートタイムやアルバイトをしている主婦の方は、この扶養を外れない範囲で働くように調整している人も多いです。
では財産を相続すると、この扶養を外れる対象になるかというと、相続と所得はまったく別物になるので、扶養を外れることもありません。
所得を発生させる財産に注意
基本的に財産を相続しただけでは相続税は発生しませんが、所得を発生させる財産については注意が必要です。
例えば、賃貸として貸し出しているアパートやなどです。
相続したアパート自体には相続税しかかかりませんが、その後アパートによって賃貸収入があり所得が増えた場合、その増えた分については所得税が発生することになります。
賃貸アパートを相続した場合
アパートの相続→相続税の手続きのみ
アパートを相続したことで得られる賃貸収入→所得として扱われるので、確定申告が必要
また、扶養に入っている配偶者が賃貸アパートを相続した場合、配偶者の所得に応じて年末調整の手続きも必要になります。
まとめ
遺産を相続すると、手元にお金や不動産が入ってくるので、確定申告や年末調整が必要なのでは、と心配される方もいらっしゃいます。しかし、確定申告や年末調整は所得に対して申告するもので、相続した財産に対して申告する相続税の申告とはまったく別物です。
ただ、相続した財産によって所得が発生する、例えば賃貸アパートなどでは、発生した所得に対して確定申告や年末調整が必要になってくるので注意しましょう。