以前は相続税の申告の際、戸籍謄本は原本が必要でしたが、平成30年4月1日以降はコピーでも大丈夫になりました。また、戸籍謄本のかわりに「法定相続情報一覧図の写し」の添付も認められるようになりました。
では相続税の申告ではどういったところで戸籍謄本が必要なのでしょうか。
また、取り寄せ方も見ていきましょう。
相続税の申告で戸籍謄本が必要な手続き
相続税の申告では下記の手続きをする時に戸籍謄本が必要になります。
- 相続税の申告
- 不動産の相続登記
- 預貯金や証券口座の名義変更
- 相続放棄または限定承認
相続税の申告は、相続をした人が必ずするわけではありません。
相続税には基礎控除というものがあり、遺産総額がこの基礎控除内であれば申告をする必要はありません。
実際、相続税の申告は全体の10%程度しか行っていません。ほとんどの人が基礎控除内で申告を行っていないんです。
不動産の相続登記は不動産の相続がない場合は必要ないでので、必ずその手続きをするわけではありません。
しかし預貯金の名義変更はほとんどの人が行う手続きなので、戸籍謄本は必要になります。
また、相続放棄をする場合も戸籍謄本が必要になります。
相続税の手続きに必要な戸籍謄本
戸籍謄本、と一言で言っても、戸籍謄本にはいくつか種類があります。
戸籍謄本には、戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍の3種類があります。
戸籍謄本は、現時点で進行中の戸籍なので、結婚したり子供ができたりすると、内容が追加されます。
除籍謄本は、もともとは戸籍謄本だったものの、戸籍内の人がいなくなったり亡くなったりして全員いなくなり、閉鎖された戸籍となります。
原戸籍も、もともとは戸籍謄本で、法改正などによって新しく戸籍謄本を作った時に、戸籍謄本から原戸籍に変わったものです。
相続税の手続きでは、
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
の2種類が必要になってきます。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本)
相続税の手続きで欠かせないのが、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本です。
被相続人が誰と誰の間に生まれて、兄弟はいるか、結婚はしているか、子供はいるか、いつ亡くなったか、ということを把握することで、相続税の手続きを進めることができます。
もし被相続人の間に隠し子や養子がいた場合も、戸籍謄本を見れば明らかになります。そうすることで、法的に誰が相続人になるのかということを、はっきりさせることができます。
被相続人が隠していて、思いもよらぬ人が相続人になる場合があるので、できるだけ早めに戸籍謄本を取り寄せるのがおすすめです。
相続人全員の現在の戸籍謄本
相続人全員の現在の戸籍謄本を提出するのは、相続人が現在ちゃんと生きていることを確認するためです。
ただ、相続人と被相続人が同じ戸籍に入っていて、「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」に相続人も載っていれば、相続人の戸籍謄本を取り寄せなくてもいい場合があります。
相続人によっては取り寄せる戸籍謄本が多くなる場合も
相続人は、被相続人との間柄によって、なれる優先順位が決まっています。
その優先順位によっては取り寄せる戸籍謄本も多くなります。
子供がいる場合
子供がいる場合、子供が相続人になります。子供全員が相続人になりますが、被相続人の戸籍に子供の情報も載っているので、追加で取り寄せる戸籍謄本は特にありません。
子供がいない場合
子供がいない場合、孫が相続人になります。
その場合、子供が亡くなっているという証明のための除籍謄本、孫の戸籍謄本が追加で必要になってきます。
子供も孫もいない場合
子供も孫もいない場合、両親が相続人になります。
その場合は、子供が亡くなっているという証明のための除籍謄本、孫が亡くなっている場合は孫の除籍謄本、両親の戸籍謄本が必要になってきます。
子供がもともといない場合は、両親の戸籍謄本だけ追加で必要になります。
子供、孫、両親もいない場合
子供、孫、両親もいなくて、祖父母がいる場合は、祖父母が相続人になります。
全員いたけど亡くなっている場合はそれぞれの除籍謄本と祖父母の戸籍謄本、子供や孫がもともといない場合は、両親の除籍謄本と祖父母の戸籍謄本が追加で必要になります。
子供、孫、両親、祖父母もいない場合
子供、孫、両親、祖父母もいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。
全員いたけど亡くなっている場合はそれぞれの除籍謄本と兄弟姉妹の戸籍謄本、子供や孫がもともといない場合は、両親祖父母の除籍謄本と、兄弟姉妹の戸籍謄本が追加で必要になります。
子供、孫、両親、祖父母、兄弟姉妹もいない場合
子供、孫、両親、祖父母、兄弟姉妹もいない場合、兄弟姉妹の子供(被相続人から見て甥、姪)が相続人になります。
全員いたけど亡くなっている場合はそれぞれの除籍謄本と甥、姪の戸籍謄本、子供や孫がもともといない場合は、両親、祖父母、兄弟姉妹の除籍謄本と甥、姪の戸籍謄本が追加で必要になります。
戸籍謄本の取り寄せ方
では戸籍謄本はどのように取り寄せるのでしょうか。
戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に請求します。直接出向くか、郵送で請求することもできます。
本籍地は現住所とは異なることが多いので、あらかじめ確認しておきましょう。もし分からない場合は、本籍地の記載がある住民票を取り寄せることで確認できます。
直接出向いて取り寄せる方法
直接本籍地の市区町村役場に出向いて取り寄せる場合、下記のものを持って行きましょう。
- 戸籍交付申請書
- 印鑑
- 本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
もし代理人が請求する場合、委任状と代理人の本人確認書類が必要になります。
郵送で取り寄せる場合
郵送で取り寄せる場合、下記のものを郵送しましょう。
- 戸籍交付申請書
- 本人確認書類のコピー(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどのコピー)
- 手数料に相当する定額小為替
- 返信用封筒と切手
もし手数料が不足していた場合、その後のやり取りに時間をとられたりするので、少し多めに同封しておくといいでしょう。
返信用の切手についても同じで、少し多めに同封しておくのがおすすめです。
戸籍謄本の交付には手数料がかかる
戸籍謄本の交付には手数料がかかり、一通あたり450円かかります。
除籍謄本の交付には、一通あたり750円かかるので、取り寄せる数が多い場合はその分手数料がかかってしまいます。
また、原戸籍も一通あたり750円かかります。
もし法改正などで新しい戸籍に必要な情報が載っていない場合、原戸籍も取り寄せることになるので、相続人が両親や兄弟、または甥や姪になる場合、かなり数が多くなり手数料も高くなる可能性があります。
場合によっては取り寄せる数が50通になることもあるので、どの戸籍謄本を取り寄せたらいいか、しっかり確認しておくようにしましょう。
まとめ
相続税の申告の際、以前は戸籍謄本の原本が必要でしたが、今はコピーでも認められるようになりました。
相続人が誰になるかによっては、取り寄せる戸籍謄本がかなりの数になる場合があります。もし取り寄せる戸籍謄本がしっかり把握できていない場合は、一度整理して確認するようにしましょう。