相続の手続きにおいて、遺産分割協議書が必要になることがあります。
ただ、必ずしも必要というわけではなく、協議書がなくても遺産相続の手続きをすることもできます。

では、どういった場合に遺産分割協議書が必要で、どういった場合は必要ではないのでしょうか。
また、どのように作成したらいいのでしょうか。

遺産分割協議書が必要な場合

遺産分割協議書とは、遺産を相続した時に、誰が何を、どのくらい相続するのかということを、話し合いによって決め、それを書面に残したものになります。
相続人全員の合意内容を明確にすることができるだけでなく、後でトラブルになるのを防ぐことにもつながります。
では遺産分割協議書が必要な場合とは、どんな時でしょうか。

遺言書がない時

遺言書があればその通りに遺産分割することができますが、遺言書がない場合、基本的には法律によって定められた法定相続人が相続することになります。
複数人いる場合、それぞれの取り分も定められてはいますが、必ずそれに従わなければならない、というわけではないので、法定相続人同士で話し合いをして決めることになります。
その際に、後から『本当はこう言っていた』『そんな合意はしていない』などとトラブルになる可能性もあるので、遺産分割協議書を作成することでそのトラブルを回避することができます。

預金口座の数が多い時

預金口座の遺産を相続する場合、金融機関の指定する用紙に相続人全員で記入が必要です。被相続人の預金口座が多いと、その都度用紙を記入しなかればならず、とても手間がかかります。
遺産分割協議書を作成しておけば、その手間を軽減することができます。

不動産の相続登記をする場合

不動産を相続した場合、法定相続分で相続する場合は遺産分割協議書はなくても大丈夫ですが、あまりおすすめはできません。
法定相続分で相続登記をする場合、だれか一人が勝手に登記することができてしまいます。手続きとしては簡単ですが、陶器した本人にしか権利証が発行されないため、後でトラブルになる可能性があります。
複数人で相続する場合、将来売却する時に遺産分割協議書があったほうがスムーズなので、多くの方が遺産分割協議書を作成しています。

遺産分割協議書が必要ない場合

では、遺産分割協議書が必要ないのはどういった場合でしょうか。

相続人が1人の場合

相続人が1人の場合、遺産は全てその方が相続することになるので、後々トラブルになることもありませんし、遺産分割協議書の作成は必要ありません。

遺産が現金・預貯金だけの場合

遺産が現金・預貯金のみで、不動産などがない場合は、金額通りに分けやすく何か届出をする必要もないので、遺産分割協議書を作成する必要はありません。
預金口座が多いと、相続人全員でその都度書類に記入をする必要がありますが、預金口座が少なければそこまで手間ではないでしょう。

遺言書の通りに相続する場合

遺言書の通りに相続する場合、相続の手続きで遺言書を提出すればいいため、遺産分割協議書を作成する必要はありません。

遺産分割協議書の作成が必要ない場合でも、相続人同士のトラブルを避けるためには、念のため遺産分割協議書を作成しておくのがおすすめです。

遺産分割協議書の作成方法

遺産分割協議書には、必ずこうでなければならない、という型はなく、ひな型を参考に作成することができます。

いつくか注意事項があり、
・預金口座は金融機関だけでなく支店名、預金種別、口座番号まで記載する
・不動産がある場合、不動産の内容は登記事項証明書の通りに記載する
・後から財産が出て来た場合にどうするかを記載する
・死亡保険金、死亡退職金については記載しない
・全員、実印で押印する
なとがあります。
死亡保険金や死亡退職金については受取人の固有財産となり、相続する遺産には含めないので記載しません。
また、相続人の指名は手書きで署名し、実印で押印するようにしましょう。

専門家に依頼した方がいい?

遺産分割協議書は自分達でも作成することができますが、以下のような場合は専門家に依頼したほうがスムーズに作成できます。

・相続人同士がもめている
・遺産の種類や数が多い
・遺産分割協議書を作る時間がない
・きちんと作る自信がない

相続人同士がもめている場合は、弁護士に間に入ってもらうのがいいでしょう。遺産が現金や預貯金だけで相続税申告が不要な場合は行政書士に、遺産に不動産があって相続税申告が不要な場合は司法書士、相続税申告が必要な場合は税理士に依頼するのがおすすめです。

遺産分割協議書を作成しないとどうなる?

遺産分割協議書を作成時しなくても、その事自体に罰則があるわけではありません。作成を催促されたり、罰金が課せられるわけではありません。
ただ、以下のようなトラブルが起きる可能性はあります。

相続税が高額になる

遺産を相続する時には、相続税というものが発生しますが、同時に控除もたくさん用意されています。しかしこの控除を受けるために、遺産分割協議書が必要になることが多いので、遺産分割協議書を作成しないと控除が受けられず、相続税が高額になる可能性があります。
また、法定相続分より少ない金額を相続することになった場合、法定相続分の通りに計算すると、実際の相続税より高くなってしまいます。しかし遺産分割協議書がないと、法定相続分より少ない金額を相続したことを証明するものがないので、法定相続分どおりに相続税を支払わなければならなくなってしまいます。

誰かが遺産を処分する可能性がある

遺産分割協議書がないと、相続人の誰かが勝手に遺産を売却処分してしまうかもしれません。家や車など、勝手に売却されていたり賃貸に出されていても、遺産分割協議書がないと自分も相続の権利があったとしても証明することができず、そのまま泣き寝入りということにもなりかねません。

相続トラブルが終わらず相続手続きができない

相続について、遺言書通りや法定相続分通りに相続することで話がまとまればいいですが、誰かが納得せず相続トラブルになっている場合、遺産分割協議書を作成しない限り、そのままトラブルが解決せず、相続手続きもできなくなってしまいます。

まとめ

遺産分割協議書は必ずしも必要なものではありませんが、相続人が複数いる場合や遺産に不動産がある場合は作成しておかないと後々トラブルになる可能性が出てきてしまいます。
作成はひな型があるので自分達でも作成できますが、間違って作成した場合は余分に相続税を支払うことにもなりかねないので、遺産の数が多い場合は専門家に任せたほうが安心です。
また、相続人同士が争っている場合も、弁護士に間に入ってもらったほうがスムーズに話し合いが進むでしょう。

遺産分割協議書は作成しなくても罰則があるわけではありませんが、スムーズに相続の手続きをし、その後のトラブルを避けるためにもできるだけ作成するのがおすすめです。