相続税は、相続が発生してから10ヶ月以内に申告をしなければなりません。それまでに必要な書類などを集め、それをもとに申告書を作成して税務署に提出する必要があります。
では、相続税の申告の際に必要な書類には何があるのでしょうか。

相続税の申告の流れ

相続税の申告は、必ずしなければならない、というものではありません。相続税の申告は、基礎控除額を超えた場合にだけする必要があります。

基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数、で計算します。
法定相続人とは、法律によって定められた相続人のことで、実際に相続する人とは必ずしも一致するわけではありません。
子供がいる場合は子供が、いない場合は孫、子供も孫もいない場合は両親、両親もいない場合は祖父母、祖父母もいない場合は兄弟姉妹が法定相続人となります。配偶者がいる場合は、そこに配偶者も追加されます。
もし配偶者と子供2人がいる場合は、法定相続人は3人となります。
その場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人で、4,800万円が基礎控除額となります。

遺産総額がこの基礎控除額を超えない場合は、相続税の申告をする必要はありません。逆を言うと、この基礎控除額を超えた場合は必要な書類を集めて申告書を作成し、相続税の申告をします。

申告書の作成に必要な書類

相続税の申告をするには、まず身分を証明するための書類が必要になります。
被相続人が亡くなったという事実や、被相続人と相続人の関係性が分かるものなど、下記の書類が必要になります。
こちらは相続税を申告するなら全員必要になります。

1.全ての方が必要な書類

  1. 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等
  2. 被相続人の住民票の除票
  3. 被相続人の戸籍の附票
  4. 相続人全員の戸籍謄本
  5. 相続人全員の住民票
  6. 相続人の戸籍の附票
  7. 相続人全員の印鑑証明書

その次に、遺産がいくらあるか把握するために必要な書類を用意します。
これは、どの遺産があるかによって、必要な書類が変わってきます。

2.現金や預金を相続した方が用意する書類

  1. 預金残高証明書
  2. 既経過利息計算書
  3. 過去5年分の通帳・定期預金の証書
  4. 手元現金

3.土地を相続した方が用意する書類

  1. 登記簿謄本(全部事項証明書)
  2. 地積測量図及び公図の写し
  3. 固定資産税評価証明書
  4. 住宅地図
  5. 名寄帳(固定資産課税台帳)
  6. 賃貸借契約書(貸地・借地がある場合)
  7. 農業委員会の証明書(他人の農地を小作している場合に必要)

4.建物を相続した方が用意する書類

  1. 登記簿謄本(全部事項証明書)
  2. 固定資産税評価証明書
  3. 売買契約書、間取り図等
  4. 名寄帳(固定資産課税台帳)
  5. 賃貸借契約書

5.生命保険を相続した方が用意する書類

  1. 生命保険金支払通知書
  2. 生命保険証書のコピー
  3. 火災保険等の保険証書コピー
  4. 解約返戻金の分かる資料

6.上場株式を相続した方が用意する書類

  1. 証券会社の預り証明書(残高証明書)
  2. 登録証明書(残高証明書)
  3. 配当金の支払通知書
  4. 被相続人の最近5年間の取引明細

その他用意する場合がある書類

その他、例えばゴルフ会員権を相続したら預託金証書、車を相続したら車検証のコピーや走行距離、車種がわかるもの、など、相続するものによって用意する書類は変わってきます。
また、相続する財産がプラスものもばかりとは限りません。借金やローンを相続した場合は、借入金残高証明書などが必要になります。
何を相続したかたによってそれぞれ用意する書類は変わってきますが、相続したものは全て財産としてカウントするので、相続した財産がいくらかわかるもの、証明できるものなどは捨てずに用意するようにしましょう。

提出書類

相続した財産がいくらか分かり、基礎控除額を計算したうえで相続税の申告が必要になった場合、提出する書類を作成します。
相続税の申告は全部で15の様式があり、相続人の立場や相続した財産の種類によって、必要な書類が変わってきます。

相続税の申告書は第1表のみで、あとは計算書や明細書の添付書類になっています。全て用意する必要はなく、相続していない財産の項目などは提出不要です。

また、申告書を記入する際は順番があるので、守るようにしましょう。

順番 様式 内容
1 第9表 生命保険金などの明細書
2 第10表 退職手当金などの明細書
3 第11表の付表 小規模宅地等、特定計画山林または特定事業用資産についての課税価格の計算明細書
第11の2表 相続時精算課税適用財産の明細書、相続時精算課税分の贈与税額控除額の計算書
4 第11表 相続税がかかる財産の明細書
5 第12表 納税猶予の適用を受ける特例農地等の明細書
6 第13表 債務及び葬式費用の明細書
7 第14表 純資産価額に加算される暦年課税
8 第15表 相続財産の種類別価額表
9 第4表 相続税額の加算金額の計算書・暦年課税分の贈与税額控除額の計算書
10 第5表 配偶者の税額軽減額の計算書
11 第6表 未成年者控除額・障害者控除額の計算書
12 第7表 相次相続控除額の計算書
13 第8表 外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書
14 第1表 相続税の申告書
15 第2表 相続税の総額の計算書
16 第3表 財産を取得した人のうちに農業相続人がいる場合の各人の算出税額の計算書

相続税の申告書作成は税理士でも難しい

相続税の申告所作成は、相続した財産が現金や預金だけの場合はそこまで複雑にはなりませんが、土地を相続した場合などはとても計算が複雑になります。
というのも、土地の評価額を求める計算式はとても複雑で、税理士でも相続税に詳しくない税理士だと計算を間違えてしまうほとです。
素人にはとても計算しきれないですし、税理士に依頼しなかった場合、提出書類に税理士のサインがないため、税務署から「計算間違いや申告ミスはないかな」と疑われやすくなり、税務調査が入る可能性がぐっと高くなります。

もしわざとではなくとも、申告ミスがあり、本来より少ない金額を提出・納付してしまっていた場合、ペナルティが課せられることもあります。

そのため、相続税の申告は税理士に依頼するのがおすすめです。

まとめ

相続税の申告に必要な書類は、何を相続したかたによって変わってきます。
とりあえず相続したけど何から準備していいか分からない、書類の作成方法などもよく分からない、という場合は、税理士に相談してみましょう。必要な書類を教えてくれますし、計算や書類の作成も全て依頼できるので、時間や労力をかなり抑えることができます。
また、自分で書類を作成してもし間違っていた場合、税務調査でそれがバレると、ペナルティを課せられる場合があります。
申告ミスをなくすためにも、税理士に依頼するのがおすすめです。