相続税対策として、タンス貯金を考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。銀行に預けると財産として税務署にバレてしまいますが、タンス貯金ならバレずに相続税もかからないのではないか、と思いますよね。実際のところ、タンス貯金は税務署にバレないのでしょうか。相続税対策になるのでしょうか。

タンス貯金とは

タンス貯金とは、銀行などの金融機関に預けず、自宅に保管しているお金のことです。タンスに保管していなくても、仏壇や本棚、金庫に保管していてもタンス貯金と呼びます。庭に埋めている場合もタンス貯金になります。世の中に出回っているお金の量からすると、タンス貯金は日本国内に50兆円あるとされています。
タンス貯金をする人達の気持ちとしては、「日本の銀行ら金利が低いので預けても仕方がない。」「マイナンバーが義務化されたら財産を把握されてしまうから、その前にタンス貯金しておきたい。」などが考えられます。日本人は特に現金が好きと言われているため、タンス貯金をする人は多いです。

タンス貯金のメリット

1.手数料がかからない

金融機関に預けると、引き出すのに手数料がかかる場合があります。コンビニなどで引き出すのは手軽にできて便利ですが、曜日や時間帯によっては216円かかる場合もあります。1度だけなら大きな金額ではないですが、週に1度、毎週だとしたら、年間で1万円以上かかることになります。
タンス貯金であれば手数料がかかりませんし、すぐにお金を使うことができます。金融機関に預けると、時間帯によってはお金を引き出せないこともあります。しかしタンス貯金であればそれも気にせずいつでもお金を使えるのでとても便利です。

2.銀行が破綻しても大丈夫

もし銀行にお金を預けていて、銀行が破綻してしまった場合、1,000万円の元金と利息しか保護されません。それを考慮して、複数の銀行にお金を預けてリスク管理している人もいます。しかしタンス貯金なら、それも気にする必要はありません。

3.必要な時にすぐにお金を使える

相続が発生した時に有効なのが、タンス貯金ならすぐにお金を使えるということです。相続が発生すると、被相続人の銀行口座は一時的に凍結されてしまい、お金が引き出せなくなります。相続人が決定するまではお金は引き出せません。
被相続人が亡くなった後、葬儀などなにかとお金がかかります。そんな時にタンス貯金があれば、すぐにお金を使えるので便利でしょう。

タンス貯金のデメリット

1.無くなる可能性がある

タンス貯金のデメリットとしては、無くなる可能性があるということです。特に災害があった際は持って逃げられないこともあります。金庫に入れていたとしても、水害で流されてしまったらどうしようもありません。火災も規模が大きい場合は、金庫であっても燃えてしまいます。
金庫に入れていない場合はさらに、リスクが上がります。
被相続人が生前にタンス貯金があることを誰にも知らせていない場合は、そのタンス貯金の存在自体がなかったことになってしまいます。もし存在自体を知らせていたとしても、場所まで知らせていない場合は探せないということもあります。

2.お金が増えない

銀行の金利は低いとはいえ、何年も預けていれば多少なりともお金は増えます。タンス貯金だと1円も増えることはありません。

タンス貯金は相続税がかかる?

タンス貯金は銀行預金と違って個人で管理できるので、相続税の対象にしなくても税務署にバレないのではないか、と思いますよね。たしかに、場合によってはバレにくいこともあります。
しかし、税務署には強い調査権限があります。被相続人が亡くなると、税務署はだいたいその人の年収などから、どのくらい財産がありそうか、という見当をつけています。年収が高く財産も多いと思われているのに、相続税の申告がなかった場合、税務署は変だなと思い、「相続税のお尋ね」を送ります。それでも相続税の申告がなければ調査を始めます。

例えば、被相続人の銀行口座の、過去の入出金履歴を見ることもできます。もし多額の出金があった場合、遺族にその使い道を聞きます。だいたい100万円単位の出金があると、用途を聞かれる可能性が高くなります。もしそこで不審な点があれば、自宅に来て財産を隠してないか調査する権限も持っているのです。
たしかに、金額が少なかったり、毎月少しずつ出金して何年にもわたってタンス貯金しているような場合は、そもそも税務署があまり不審に思わないので、バレにくくはなります。だからといってタンス貯金をして相続税対策をするのはおすすめできません。

未申告のタンス貯金が見つかったら?

もしタンス貯金を隠していた事がバレた場合、本来納税しなければならなかった金額に加えて、重加算税というものがかかります。重加算税は、遺産を隠蔽したり嘘をついて申告した際に課せられるペナルティで、本来払うはずだった相続税の40%をさらに払うことになります。
例えば、本来の相続税が500万円だとして、未申告で300万円しか支払っていなかった場合、残りの200万円と、重加算税を追加で200万円を支払うということです。

タンス貯金より贈与で

もしタンス貯金が相続税対策目的であるならば、タンス貯金よりも贈与のほうがおすすめです。贈与も贈与税がかかりますが、贈与する相手1人に対して年間110万円までは非課税となっています。毎年110万円までは税金がかからないので、子どもや孫に少しずつ贈与すれば、相続税対策になりますし、重加算税がかかるかともありません。

まとめ

タンス貯金は一見相続税対策になりそうに見えますが、税務署は年収などからだいたいの財産を把握しています。
もし隠して相続税申告をしたのがバレてしまったら、未申告分と重加算税を支払うことになります。
もし相続税対策をしたいのであれば、贈与をしたり、罰則のない方法で対策するほうがおすすめです。
もし相続税対策をしたいけど何をしたらいいか分からない、という方は、税理士に相談してみましょう。