貯金や不動産というのは、いかにも遺産という感じがして分かりやすいですが、中には美術品や骨董品を相続することもありますよね。
しかし美術品や骨董品は、高いものもあれば、趣味で集めている程度のものまで様々です。
もし美術品や骨董品を相続したら、どのように相続税の手続きをしていくのでしょうか。また、相続税の評価はどのようにしたらいいのでしょうか。
美術品や骨董品には相続税がかかる?
美術品や骨董品は、素人が見たらただの趣味のコレクションだったとしても、お金に換えられることができるので、財産として扱われます。財産として扱われるということは、課税対象となり相続税がかかることになります。
しかし相続税には、基礎控除というものがあり、最低でも3,600万円の控除枠があります。この基礎控除を超えない限り、相続税はかからず、実際に9割以上の人は相続税がかからず支払っていません。
そのため、美術品や骨董品の評価額が100万円程度で、他の財産を合わせても3,600万円を超えないような場合、あまり気にしなくて大丈夫です。
美術品や骨董品には3種類ある
美術品や骨董品は作品によって、扱い方が3種類に分けられます。
一般人の作品
アーティストとしては無名の人や、友人知人の作品は、被相続人がどんなに評価していたとしても、相続税評価はつかないことになります。大事な人の作品だったとしても、相続税の計算をする上では、美術品や骨董品のカテゴリには入りません。
購入価格が10万円以下の作品
一般人の作品含め、購入価格が10万円以下の作品については、被相続人の家に残された家電製品や日用品などと一緒に、「家庭用財産」として扱われることになります。
美術品や骨董品のカテゴリではありませんが、家庭用財産として扱われ、あくまで財産として扱われるので注意が必要です。
数千円の美術品であってもきちんと申告する必要があるので、忘れないようにしましょう。
高価な作品
一点が数十万円、数百万円する美術品を持っていた場合、美術品や骨董品のカテゴリとして扱います。
こういった高価な作品を複数個持っている場合、相続税の基礎控除額を超えやすく、家庭用財産には含めることができません。
美術品や骨董品の相続税評価は2種類
美術品や骨董品の相続税評価をする場合、「販売業者が所有する棚卸し商品等」と、「一般家庭で持っている物」の2種類で、評価方法が違ってきます。
「販売業者が所有する棚卸し商品等」は、商品の内容によって評価方法が変わってきて、会社等が確定申告の際に計算した評価額が用いられます。
「一般家庭で持っている物」は、売買実例価格を知るか、精通者意見価額等を参考にして評価額を決めます。
精通者とは、いわゆる美術品や骨董品の専門家のことで、鑑定士なども含まれます。鑑定士に依頼することで、その美術品や骨董品がいくらの価値があるのか、ということが分かりますよね。
精通者は特に国税庁による資格認定や指定がないため、近所の鑑定士や知り合いの鑑定士など、頼みやすい人に頼んだり、何人かに依頼して、自分に合った人を見つけてもいいでしょう。
実際に利用される相続税の評価方法
では、売買実例価格を知るか、精通者意見価格を参考にするかといったところで、実際によく利用されている評価方法を見てみましょう。
購入価格を参考にする
購入時の領収書やレシートがある場合、この購入価格を参考にすることができます。しかし美術品や骨董品は価値が変動するうえ、絵画などは絵画ブームの頃より価格が下がっている確率が高いです。
そのため、購入価格を参考にしてしまうと、評価額が本来より高くなってしまい、その分相続税が高くなりリスクがあります。
オークション価格を参考にする
オークションに出してみることで、大体の価格が分かる場合もあります。
しかしオークションに出すには、その作品の作家名や作品名が分からないと、正しく評価がなされない場合があります。また、もし被相続人の持ち物の中に偽物が合った場合は過大評価になってしまう可能性があり、そうするとその分相続税も高くなってしまいます。
美術年鑑を利用する
もし被相続人が美術年鑑を持っていた場合、そこに記載されている価格から相続税の評価額を知ることができます。
しかしそこに記載されている金額は、その作家の最高傑作の値段であるため、一般家庭で持っている美術品を比べると、これも過大評価になりリスクが大きいです。
買取業者の査定額を参考にする
買取業者が充実している今、メールやLINEで無料査定を依頼することができます。
数が少なく、作品の情報がある程度分かっている場合は、この方法が利用しやすいでしょう。鑑定士に依頼すると、やはりお金がかかりますし、もしかしたら価値が低いものばかりかもしれない、という場合、無料で査定してもらえるのはいいですよね。
鑑定士に依頼する
鑑定士に依頼するのはお金がかかりますが、その分より正確な評価額を得ることができます。評価鑑定書を作成してもらい、相続が終わった後、処分なども一緒に依頼することができます。
鑑定士に依頼する場合、だいたい依頼料として20,000円~100,000円、作品1点につき2,000円~20,000円前後の費用がかかるのが一般的です。
高い美術品の場合、寄付もあり
評価額の高い美術品を相続した、けど相続人の中にはその美術品を欲しい人がいない、高い相続税だけ支払うことになってしまう、というような場合、寄付するという手もあります。相続税の手続きは相続が発生してから10ヶ月以内に行う必要がありますが、その前に寄付をしてしまえば、相続した財産からは外されるので、その分相続税を抑えることができます。
もし寄付したい場合は、国や地方公共団体などが運営している美術館に寄付するのがいいでしょう。
まとめ
美術品や骨董品には、趣味で購入した安いものもあれば、誰もが知っているような作家の高価な作品もあります。
安いものを相続したのであれば、家庭用財産としてカウントできますが、高価な作品は美術品や骨董品のカテゴリとしてきちんと評価額を出して、相続税の計算をする必要があります。
評価額を出すにはいくつか方法がありますが、買取業者に無料査定を依頼したり、鑑定士に依頼するのがいいでしょう。
また、高価なものを相続したけど、相続人の中には美術品や骨董品に興味がある人がおらず、相続税も抑えたい、という場合、寄付するという手もあります。寄付をすれば相続財産からは外されるので、相続税を抑えることができます。
ただ、相続税の申告期限までに寄付をする必要があるので、まずは早めに評価額を調べ、どうするか決めましょう。