養子縁組をすることで、相続税対策になることを知っていますか。この効果を知って孫を養子縁組する人が多いですが、孫を養子縁組することは、必ずしも相続税対策になるわけではありません。
場合によっては相続税がかえって高くなるリスクもあります。また、相続税対策のために養子縁組したとバレると、養子縁組が認められないこともあります。
では養子縁組をするとどうして相続税対策になるのでしょうか。また、養子縁組をする際の注意点などには何があるのでしょうか。
養子縁組が相続税対策になる理由
養子縁組をすると、なぜ相続税対策になるのでしょうか。
相続税には、基礎控除というものがあり、遺産総額から基礎控除額を引いた金額に対して相続税が課税されることになります。基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数、で計算されます。
そのため、法定相続人が増えるほど基礎控除額が増え、課税対象額が減ります。
養子縁組をする前の法定相続人が、配偶者と実子の2人だとしたら、基礎控除額は3,000万円+600万円×2人の4,200万円になります。
もし孫を養子縁組したとしたら、法定相続人は配偶者と実子と養子縁組した孫の3人になります。基礎控除額は3,000万円+600万円×3人の4,800万円になります。
ちなみに、養子縁組しなくても遺産総額が基礎控除内でおさまっている場合は、養子縁組してもしなくても変わらないので、養子縁組するメリットはありません。
養子縁組には2種類ある
養子縁組には実は2種類あり、特別養子縁組と普通養子縁組があります。
特別養子縁組
特別養子縁組は、子が実親との法律上の関係を切り、養親と親子関係になることです。
この制度は子供の福祉を目的としてできたもので、実親が子を育てられない事情があった際、他の親のもとで養育することができます。しかし実親との法律上の関係を切るため、その分要件も厳しくなっています。
要件としては、
- 原則として子は6歳未満、養親は配偶者がいて、なおかつ一方は25歳以上であること
- 実親による養育が難しいなど特別な事情があり、子の利益になると判断される場合に、家庭裁判所の審判により成立する
ということが挙げられます。
普通養子縁組
普通養子縁組は、実親との関係はそのままで、養親の養子になります。つまり、実親と養親の両方と親子関係になるということです。
要件としては、
- 養子となる子が15歳未満の場合は、実親の同意が必要
- 未成年者を養子にする場合は原則、家庭裁判所の許可が必要
- 養親の年長者を養子にすることはできない
ということが挙げられます。
相続税対策としての養子縁組は、特別養子縁組でも普通養子縁組でもどちらでも大丈夫です。
ただ、特別養子縁組で下記の条件を満たしている場合、養子縁組ではなく法律上実子として扱われます。
特別養子縁組によって、被相続人の養子となっている
被相続人の配偶者の実子で、被相続人の養子となっている
というような場合、養子ではなく実子として扱います。
養子縁組は何人までOK?
これを見ると、養子縁組をたくさんすれば基礎控除額がどんどん高くなり、相続税がかなり節税できるのでは?と思いますよね。法律上では、養子縁組は何人でもすることができます。極端な話、100人でも養子縁組することができます。
しかし、それではそのために何人も養子縁組をする人が出てきてしまいます。
そのため、相続税を計算する場合は、養子を相続人にできる人数には制限があります。
実子がいる場合は養子は1人まで、実子がいない場合には養子は2人までと決められています。
相続税対策で養子縁組しているとバレたら?
国税庁のホームページでは、下記のように記載しています。
「養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、その原因となる養子の数は、養子の数に含めることはできません」
あきらかに相続税対策のために養子縁組をしていた場合、養子を相続人に含めないということです。
相続税対策が目的かどうかバレるのは、税務調査で質問された時などです。「どうして養子縁組されたのですか」と聞かれた時に、相続税に関することは言わないようにしましょう。
養子縁組した相続人は二割加算に注意
相続税には、一親等の血族以外が相続する場合は相続税が二割増えるという、二割加算の制度があります。相続税全体が二割加算されるわけではなく、各相続人の相続税を割り出したあと、該当する人だけ相続税が二割加算されます。
例えば、一親等の血族でない孫や兄弟が相続する場合、その人の相続税が本来100万円だったとしても、二割加算が適用され120万円に増えるということです。
ただ、子供がすでに亡くなっていて孫を養子縁組する場合、孫は代襲相続になります。その場合は二割加算の対象にはなりません。
養子縁組すると相続税が増えることも
養子縁組すると、相続人が増えて基礎控除額も増え、相続税が減るということですが、逆に相続税が増えることもあります。
例えば、Aさんには配偶者と兄、妹がいて、子供や両親がいなかったとします。
Aさんが亡くなったとすると、この配偶者と兄、妹が相続人になるため、相続人は3人です。そうなると基礎控除額は4,800万円です。
しかし養子縁組をするといいと聞いて、兄の子供、つまりAさんから見て甥っ子を1人養子縁組していたとします。そうすると、法定相続人は配偶者と養子の2人になってしまい、基礎控除額は4,200万円に減ってしまいます。
つまり、養子縁組をして法定相続人が増える場合と減る場合があるので、そこは場合によってどちらがいいのかしっかり見極めましょう。
まとめ
養子縁組をすることによって、法定相続人が増えると、基礎控除額が増えて相続税対策をすることができます。
養子縁組には特別養子縁組と普通養子縁組があり、特別養子縁組の場合は基本的に法律上は実子と同じ扱いになります。普通養子縁組の場合は養子として扱うので、代襲相続でない場合は相続税が二割加算されます。
また、養子縁組は場合によっては相続税が増えることになってしまいます。誰が相続人なのかによって変わってくるので、もし相続税対策のために養子縁組を考えている方は、一度税理士に相談してみるのがおすすめです。