遺産を相続すると、ある一定の金額を超えると相続税がかかってきます。
できるならば支払いたくないのが相続税ですが、相続税は財産の中でも課税対象となる財産と、ならない財産があります。
もしかしたら、それを知っているだけで相続税をなくしたり、または少しでも安く抑えられるかもしれませんので、一度確認しておきましょう。

相続税の課税対象となる財産は?

基本的に、被相続人が持っていたもので、お金に換えられるものは課税対象となります。

①現金、預貯金、積立金、有価証券などの金融資産
②土地、農地、牧場、借地権などの不動産(土地)
③マンション、アパート、一軒家、駐車場、倉庫などの不動産(家屋)
④貴金属、宝石、自動車、骨董品、美術品などの動産
⑤ゴルフ会員権、著作権、特許権などの権利
⑥機械、商品、売掛金、などの事業用財産

主にこの6種類があります。

預金や現金は金額も分かりやすい財産になります。口座に入っているお金に関しては、相続人全員の合意をもって、引き出すことができます。
有価証券は、場合によっては金額が大きくなります。自分で買ったことがないとよく分からないもの、というイメージがあって放置してしまいがちですが、きちんと財産に含めるようにしましょう。

土地やマンション、一軒家なども相続税の課税対象となります。
土地やマンションは、財産価値としていくらくらいあるか、という評価額を求める計算がどうしても複雑になります。また、複数人で相続する場合、分配しにくいものでもあります。
そのため、土地やマンションを相続する場合は税理士に相談して、相続税を計算してもらうのがおすすめです。
その分、土地やマンションは控除も用意されているので、うまく利用すれば相続税をぐっと抑えられるものでもあります。

宝石や骨董品、美術品など、お金に換えられるものは財産としてカウントするので、勝手に捨ててしまわないようにしましょう。

ゴルフ会員権も忘れられがちですが、お金に換えられるものなので、財産としてカウントします。

被相続人が事業をしていた場合、その事業に関わるものも財産になり得ます。
何を、誰がどれくらい相続する、という計算は複雑になってきやすいので、この場合も税理士に依頼するのがおすすめです。

みなし財産も財産に含める

みなし財産とは、被相続人が持っていた財産ではなく、被相続人が亡くなることで発生する財産のことです。
生命保険の死亡保険や、死亡退職金がこれにあたります。
みなし財産には控除が用意されていて、法定相続人1人あたり500万円が控除枠となります。
そのため、現金や預金で全て財産を残すよりは、生命保険に加入しておくほうが、節税効果があります。

相続から3年以内の贈与も課税対象

相続税対策のために、生前贈与をする方もいらっしゃいますが、残念ながら相続から3年以内の贈与も課税対象となります。
その場合、贈与税の処理はなかったことになり、相続税の処理として持ち越されます。すでに支払った贈与税については、相続税の計算後、多く支払っていた場合還付されます。

課税対象とならない財産もある?

では、基本的にお金に換えられるものは課税対象となりますが、課税対象とならないものにはどんなものがあるのでしょうか。
課税対象とならない財産は、以下の5つです。

①お墓や仏具

被相続人を祀るためのお墓、仏具、神棚、葬儀費用などは課税対象となりません。
一般的には、被相続人の財産の中から支払いがされたり、一時的に相続人が建て替えて支払いますが、後々被相続人の財産から支払う人が多いです。
課税対象とはならないですが、あまりに高額な場合、相場との差額が課税対象となることもあるので、節税のために葬儀を豪華にしたりするのはやめておきましょう。

②宗教や慈善事業で使用されるお金

被相続人が宗教団体、慈善団体などの公益事業を行っている場合、その事業に使うことが分かっているお金は課税対象になりません。

③幼稚園などに使用されていた事業資産

被相続人が幼稚園などを経営していた場合、その土地や設備は課税対象とならない可能性があります。幼稚園の他には盲学校や看護学校があります。
この制度を利用するには、少なくとも5年は幼稚園を運営していた、という税申告がされていることが条件になります。

④事故などの損害賠償金

被相続人が事故などで亡くなり、損害賠償金を受け取る場合、それは課税対象とはなりません。
遺族の精神的苦痛に対する慰謝料の場合、所得税もかかりません。

⑤国や地方公共団体に寄付したお金

相続した財産を、相続税の申告までに国や地方公共団体に寄付した場合、その寄付した財産については相続税はかかりません。ただ、寄付先はどこでもいいというわけではありません。
寄付する前に、寄付先に、相続税の非課税対象となるかどうか問い合わせてから寄付するのがおすすめです。

各種控除を利用して非課税に

相続税には、控除が色々用意されていて、相続した財産全額に相続税がかかるわけではありません。

基礎控除

まず一番最初に適用されるのが、基礎控除になります。
基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数、になります。
法定相続人が1人の場合は3,600万円、2人の場合は4,200万円、3人の場合は4,800万円、という風に、法定相続人が多いほど基礎控除額も増えていきます。

遺産総額がこの基礎控除額以内であれば、相続税はかかりませんし、相続税の申告もしなくて大丈夫です。
また、この基礎控除額を超えた場合、超えた分にだけ相続税がかかることになります。

基礎控除額が4,200万円、遺産総額が5,000万円の場合、5,000万円-4,200万円=800万円に対して相続税がかかることになります。

配偶者控除

配偶者が相続をする場合、相続する遺産が1億6,000万円までであれば、相続税がかかりません。これを配偶者控除と言います。
もし1億6,000万円を超える場合でも、法定相続分の以内であれば相続税はかかりません。
法定相続分とは、実際に相続する金額とは関係なく、法律で定められた遺産の取り分のことです。
配偶者は基本的に他の相続人が誰であろうと1/2は相続する権利があるので、遺言書によってそれ以上を相続し、かる1億6,000万円を超えるような場合以外は、相続税はかからないんです。

小規模宅地等の特例

被相続人と一緒に住んでいた家を相続する場合、小規模宅地等の特例という特例を適用することができ、家の評価額を80%カットすることができます。
例えば、評価額が5,000万円ある家を相続した場合、相続税の計算の際に、1,000万円に対してしか相続税がかからないことになります。
ただ、被相続人と一緒に住んでいた、ということが条件になるため、ただ被相続人が住んでいた家を相続した場合は適用されません。

まとめ

一口に財産と言っても色々あり、そのうちほとんどは課税対象となりますが、中には課税対象とならないものもあります。
財産が多くても、各種控除を利用すれば、非課税枠を広げることができ、相続税を安く抑えることも可能です。

不動産などを相続していて、計算が複雑で難しい、という場合は税理士に相談してみるのがおすすめです。