相続税には、連帯納付義務というものがあるのをご存知ですか。相続税は、自分の分を払ったら終わりではなく、他にも相続人がいて、その相続人が相続税を支払っていない場合、連帯責任を負わされることになるんです。
身内ならまだしも、相続では遺言書などで親族でもない人が相続人になる可能性もあります。そういった他人の相続税も支払わされることになったら嫌ですよね。

では相続税の連帯納付義務とは具体的にどんなものなのでしょうか。また、他人の相続税の支払いを避けるためにはどうしたらいいのでしょうか。

相続税の連帯納付義務とは

相続税の連帯納付義務とは、同じ被相続人から財産を取得した人が、お互いに連帯責任を負うことです。
例えば、Aさんが亡くなって、BさんとCさんとDさんが相続したとします。Dさんが相続税を支払えずに連絡もとれない、となると、BさんとCさんでDさんの相続税を支払うことになります。
注意したいのが、ここでいう相続人とは、法定相続人だけでなく、遺言書によって指定された相続人(受遺者)も含まれてしまうということです。

例えばBさんとCさんはAさんの子供だとして、もともと相続の権利もあったとします。しかしDさんは親族でもなく、Aさんが生前お世話になった他人だとします。そしてDさんが相続後、連絡がとれなくなったとしたら、BさんとCさんは他人のDさんの相続税を肩代わりしなければならないということです。

ただ、金額の上限は設定されていて、「相続により取得した財産の価額を限度額にしている」となっています。つまり、自分が相続した財産から得られる利益金額が限度額で、それ以上を徴収されることはありません。
もしBさんが遺産を1,000万円相続し、相続税を100万円支払っていたとしたら、1,000万円-100万円で900万円が上限ということです。

連帯納付義務の負担範囲は?

では上記の例で、もともと相続人が3人いて、1人が納付できず、残りの2人で連帯納付する場合、負担範囲はどうやって決めるのでしょうか。
もしBさんもCさんも、Aさんから事業や何か利益がある財産を相続していない場合、2人が平等に連帯納付義務を負います。
どちらかが利益がある財産を相続している場合は、その事業から得られる利益割合に応じて負担の範囲が決められることになります。

利子税を加えた金額を負担する

相続税を期限内に納付していなかった場合、通常であれば延滞税が課せられることになります。以前は連帯納付義務でも延滞税が課せられ、14.6%が延滞税として課せられていました。この14.6%が上乗せされた金額を連帯責任で納付するわけですが、あまりに負担が大きいということで、延滞税ではなく利子税が課せられることになりました。利子税は年利4.3%です。

もしDさんが100万円の相続税を支払っていなかったとしたら、1年後に104万3,000円になるということです。

連帯納付義務の流れ

本来、納税義務者が相続税を納付していなかった場合、督促状が送られます。それでも納付されない場合、約1ヶ月後に連帯納付義務者にたいして納税が完納されていない旨の通知が届きます。
連帯納付義務者に納税の請求がある場合、納付通知書も届きます。

それでも納税がない場合、約2ヶ月後に連帯納付義務者にたいして督促状が届きます。

督促状が届いても納税しない場合は、財産の差し押さえが行われます。
法律上では、誰の財産を差し押さえるか、ということが決まっておらず、税務署が決めた人の財産が差し押さえられることになります。滞納している人の財産が不動産などなかなか現金化できないものの場合、預金がある人などが選ばれる可能性があります。

連帯納付義務は納税するまで続くので、相続をする際は相続人全員で話し合って遺産の取り分を決める必要があります。

連帯納付義務は5年間

この相続税の連帯納付義務は、相続税の申告期限から5年間は有効になっています。そのため、実際には相続が発生してから5年と10ヶ月は、連帯納付義務があります。その間に、税務署から連帯納付義務で他の相続人の相続税を納めてくださいと連絡があれば、納める義務があります。
ただ、その相続人が、延納や納税猶予の適用を受けた場合は、連帯納付義務は免除されることになります。

連帯納付義務を回避するためには

では連帯納付義務をできるだけ回避するためにはどうしたらいいでしょうか。
回避するためには、遺産尾分配をする際に、現金での支払いができるように配慮することです。

例えば、遺産が預金だけでなく、土地や不動産など、すぐには現金化できなかったり、現金化せずそのまま保有したいものが混ざっていたとします。それを分配する際、1人は預金、1人は土地、という風にすると、土地を相続した人は相続する遺産はあるけど相続税で支払う現金が手元に入ってこないので、相続税の支払いがきつくなります。

また、もし個人的に借金などがある場合、現金が手元に入るとすぐに借金の返済に充ててしまい、相続税の支払いができないということもあるでしょう。

そうならないためには、相続の際にしっかり話し合い、相続税が問題なく払えそうか確認をとるしかありません。
抱えている借金はないか、相続税の支払いはきつくないか、もしきつい場合はいくら現金があれば払えそうか、など確認するようにしましょう。

また、もし相続税の支払いを別の人が立て替えた場合、一時的なものであれば問題ありませんが、肩代わりをした場合は贈与税が発生することになります。

まとめ

相続税には連帯納付義務があり、自分が相続税を支払ったら終わりではなく、他の相続人も相続税を支払うまで完納とは呼べません。もし他の相続人が支払えない場合は、自分のところに請求がくることになり、代わりに支払う必要があります。
そうならないためには、相続の際に、遺産の取り分をしっかり話し合う必要があります。
連帯納付義務は納税するまで終わらないので、もしお困りの方は早めに税理士に相談するようにしましょう。