ある日突然不動産を相続することになったら、どのような手続きをしたらいいのか分からず不安になりませんか。
現金や貯金は分かりやすいですが、不動産を相続したらどのような手続きが必要なのでしょうか。
また、相続税を安く抑える方法はあるのでしょうか。

不動産を相続したら名義変更手続きを

不動産を相続したら、まず考えたいのが名義変更手続きです。

不動産はの名義は、その持ち主が誰なのかということを証明するためにあります。もし名義がなかったら、誰かに勝手に売られてしまうこともあるでしょう。
そのため、不動産は名義登録が義務付けられています。

不動産を相続する時、不動産の名義は被相続人のものになっています。
この被相続人名義の不動産は、名義変更しなければならないのでしょうか。

実は、相続において、不動産の名義変更は義務ではありません。期限も特に決められておらず、名義変更しないまま放っておいても、ペナルティなどもありませんし、怒られるようなこともありません。
しかし名義変更はできればしたほうがいいものです。というのも、名義変更しないでいると、下記のようなデメリットがあるからです。

名義変更しないデメリット

デメリット1.売却したり貸し出すことができない

被相続人の名義である限り、持ち主は被相続人のままなので、売却したり人に貸し出すことはできません。
もし被相続人と一緒に住んでいなければ、不動産を相続したら売却してお金にするか、人に貸し出して不動産収入を得るか、どちらかを選択する人が多いでしょう。しかし名義変更しないでいると、どちらもできなくなってしまうのです。

デメリット2.次の相続の際に手続きが大変

もし名義変更をしないでいるうちに、相続人が亡くなり、さらに相続が発生したとします。
例えば、もともとAさんの持ち主であった不動産を、Bさんが相続したとします。しかし名義変更しないでそのままにしているうちに、今度はBさんが亡くなってCさんが相続したとします。
そうすると、CさんはAさんの持ち物である不動産を自分の名義に変更する必要がありますが、集める書類などが多く、手続きが大変になってしまいます。権利関係が複雑になってくると、名義変更も不可能になる可能性があります

デメリット3.他の相続人に売却される可能性も

相続人が複数人いる場合、不動産の名義は誰にするのか、ということを話し合う必要があります。
名義変更をするまでは、基本的に相続人全員で共有していることになります。
その共有状態を放っておくと、他の相続人が勝手に名義変更をして、勝手に売却してしまう、ということもあり得ます。
相続人同士で話し合い、誰の名義にするか決めたらあまり期間を開けずに名義変更するのがいいでしょう。

名義変更の手続き方法

不動産の名義変更では、まずは遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は、相続人全員で話し合い、遺産をどのように分けるかを書面に残したものです。

法定相続分に基づいてそのまま相続する場合や、遺言書通りに相続する場合は必要ありませんが、それ以外の取り分で相続する場合、この遺産分割協議書がないと、各相続人が「私の取り分はこれくらいだった」と言いだし、後からトラブルになる可能性もあります。そのため、法定相続分以外、遺言書もない場合は遺産分割協議書を作成しておくのがいいでしょう。

遺産分割協議書の他には、下記の書類を用意し、法務局に提出します。

  • 登記申請書→自分で作成するか、司法書士に依頼して作成する
  • 土地の全部事項証明書(登記簿謄本)→法務局で取得する
  • 亡くなった人の戸籍謄本(出生から亡くなるまでの全て)
  • 亡くなった人の住民票の除票
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票の写し
  • 土地の固定資産税評価証明書(東京都23区は都税事務所で取得)
  • 相続人全員の印鑑証明書

司法書士に依頼すると、だいたい1件あたり5万円程度で手続きを行ってくれます。
登記申請書など、自分たちで作成するのは時間もないし手間、という方は司法書士に依頼しましょう。

名義変更手続きでお金はかかる?

名義変更するのに、お金はかかるのでしょうか。
不動産を相続し、名義変更する場合、下記の費用がかかります。

項目 費用の目安
登録免許税 固定資産税評価額の0.4%
戸籍謄本や住民票などの取得費用 5,000円程度
司法書士へ依頼する場合の報酬 5万円程度

例えば、固定資産税評価額が3,000万円の不動産を相続して名義変更するとしたら、登録免許税は12万円になります。
固定資産税評価額は、市役所等で「固定資産税評価証明書」を取得すると分かります。

不動産を相続した際、相続税を抑える方法

不動産は金額が大きくなりやすいので、相続税も高くなるのでは、と心配になりますよね。
不動産を相続した際に利用したいのが、小規模宅地等の特例です。

小規模宅地等の特例を利用することで、相続した土地の評価額を最大80%減額することができます。

宅地の種類 限度面積 減額される割合
居住用宅地 330平方メートル 80%
貸付事業用宅地 200平方メートル 50%
特定事業用宅地 400平方メートル 80%

相続した不動産が居住用で、被相続人と一緒に住んでいた場合は、特定居住用宅地として330㎡まで、80%減額することができます。
事務所やお店など事業用の土地を相続し、同じ事業を続ける場合は、事業用宅地として400㎡まで、80%減額することができます。
賃貸アパートや駐車場などを相続した場合、貸付事業用宅地として200㎡まで、50%減額することができます。

例えば、居住用の不動産を相続し、評価額が3,000万円だったとします。
小規模宅地等の特例を利用しないとそのまま3,000万円に対して相続税がかかってきますが、小規模宅地等の特例を利用すると、240万円に評価額を下げることができます。
もし他に相続した財産が2,000万円あったとし、基礎控除額が3,600万円だとしたら、小規模宅地等の特例を利用しないと1,400万円に対して相続税がかかりますが、小規模宅地等の特例を利用すると基礎控除内におさまるので、相続税が発生しないことになります。

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まとめ

不動産を相続すると、義務ではありませんが名義変更手続きをする必要があります。名義変更をしないでいると、不動産を売却したり貸し出すこともできませんし、その後さらに相続が発生すると手続きがどんどん大変になってしまいます。
名義変更手続きは、遺産分割協議書と、登記申請書、土地の全部事項証明書の他に、相続人の戸籍謄本などを集め、提出します。司法書士に依頼する場合は、だいたい1件5万円で手続きを行ってくれます。
相続税の手続きを合わせると面倒に感じるかもしれませんが、後でトラブルにならないためにも名義変更はしておきましょう。