遺産の相続が決まった後気になるのが、相続税がいくらかかるのか、ということではないでしょうか。場合によっては、家や土地などを売却しないと相続税が支払えないかもしれない、となると、ざっとでいいからいくらくらいか計算しておきたい、ということもありますよね。相続税の計算は、まず財産の全額を算出することから始まりますが、該当するものには何があるのか、税率はどのくらいなのか、具体的にはどうやって計算していくのか、詳しくご紹介していきたいと思います。

相続税は必ず支払うわけではない?

相続税は、実際にもらった財産の全額にかかるわけではなく、基礎控除額等を差し引いて計算し、税率をかけることになります。基礎控除額以下であれば、相続税を支払う必要はありませんし、財産の他に債務(借金)が合った場合、財産の総額から債務額が引かれるため、まずは財産が全部でいくらあるのか、債務はないのか、ということを確認していく必要があります。

財産に該当するもの

では、実際に財産に該当するものを見ていきましょう。

現金・預貯金

一番わかりやすいのが、現金や預貯金ではないでしょうか。預金口座に入っているお金は、相続人全員の合意をもって、引き出すことができます。

不動産

土地や持ち家だけでなく、賃貸で貸し出しているアパートやマンション、駐車場、田んぼや畑なども該当します。ただ、不動産に関わる税金はいくらか節税する方法もあるため、税理士へ相談するものおすすめです。

骨董品や美術品

骨董品や美術品、宝石などは処分してしまいがちですが、財産に該当します。金額についてはお店などで鑑定してもらうといいでしょう。

権利など

ゴルフの会員権、著作権、特許権なども該当します。

他人名義の通帳

子供や孫のために、他人名義の口座で預金をしている場合がありますが、こちらも財産としてカウントされます。

みなし相続財産

みなし相続財産とは、「被相続人の死亡によって得られ、お金に換えられるもの」となります。例えば生命保険の死亡保険金や死亡退職金などがこれにあたります。
ただ、こちらは全額対象になるわけではなく、控除もあります。控除額の計算方法は、

500万円×相続人の数=控除額

となります。
この控除額を利用し、現金で財産を残すより、保険に加入して節税対策している人も多いので、被相続人がどんな保険に加入していたか、きちんと確認してみましょう。

負債もしっかり確認しましょう

財産の総額が割りだせたら、次は負債の確認もしておきましょう。
財産を全て探し出し、金額にして計算するだけでも大変ですが、負債を見落としてしまうと後々大変なことになります。
例えば、負債があまりにも大きく、財産を相続したとしても負債の方が大きい、というような場合、相続を拒否することができます。しかし、この相続放棄は相続のことを知ってから3カ月以内でなければ利用できない制度なので、期限内に確認して決める必要があります。また、負債がある場合、財産から負債を引いたものが課税対象となるため、相続税が少なくなります。負債を確認し忘れることで、本来よりも多く相続税を支払ってしまうことになりかねないので、しっかり確認しておきましょう。

葬儀費用は基本的に非課税

葬儀費用は本来、亡くなった方の遺族が支払うものであり、亡くなった方本人の負債にはなりません。しかし実際には、必然的に発生する費用であり、相続財産から支払われることが一般的であるため、財産から差し引いて非課税とすることができます。
ただ、だからといって葬儀に関わるものがなんでも非課税になる、というわけではありませんし、心づけで何百万円、何千万円も使うので全額対象にしてください、というようなことはできません。あくまで一般的な金額の中で、葬儀会社に支払う金額、飲食費、参列者に渡す御礼費用などが対象になります。

相続税の具体的な計算方法

財産や負債を確認できたら、具体的に計算をしていきます。
相続税の計算をする上で欠かせないのが、基礎控除額です。
基礎控除額の計算方法は、

基礎控除額=3,000万円+相続人×600万円

となります。相続人が1人の場合は3,600万円、2人の場合は4,200万円となります。この課税価格(課税の対象となる財産の金額)から基礎控除額を引いた金額を、課税遺産総額と言います。相続税の計算はこの課税遺産総額をもとに、法定相続分で分けたと仮定して計算していきます。

法定相続分とは?

法定相続分とは、民法によって定められた、相続の取り分のことです。
法定相続人には順位があり、配偶者、子供、父母、兄弟の順で優先されることになります。

配偶者がいる場合

子供がいない場合→配偶者が100%
子供がいる場合→配偶者が1/2、残りを子供が均等に配分
父母がいる場合→配偶者が2/3、父母が1/3
兄弟がいる場合→配偶者が3/4、兄弟が1/4

配偶者がいない場合

子供→100%(父母は0%)
子供がいない場合→父母が100%
子供、父母がいない場合→兄弟が100%

というように定められています。
これによって実際の相続の取り分が決まり、そこから税率と控除額が割り出されます。

法定相続分によって決まった取り分 税率 控除額
1000万円以下 10% 0円
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

例えば、課税遺産総額が3,000万円だとして、法定相続人は配偶者と子供2人だとします。
その場合、法定相続分は配偶者が1/2の1,500万円子供がそれぞれ750万円ずつとなります。相続税は、1,500万円×15%-5o万円+750万円×10%+750万円×10%=175万円+75万円+75万円で、合計325万円の相続税を支払うことになります。

相続税が控除されるケースもあります

各相続人によっては控除が適用される場合もあります。

配偶者控除

配偶者は配偶者控除が適用されます。
相続税の総額×①か②のうち少ないほう/課税価格の合計額=軽減される税額
①課税価格の合計額×配偶者の法定相続分(これが1億6,000万円未満の時は1億6,000万円)
②配偶者の課税価格
言葉が難しいかもしれませんが、配偶者が相続した財産のうち、課税対象となるものが1億6,000万円以内であれば、相続税が課税されないと覚えておくといいでしょう。

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未成年控除

未成年であれば、年齢に応じて控除が適用されます。

20-現在の年齢×10万円

年齢については、1年未満は切り捨てとなります。
14歳6カ月の場合、20-14の6年となり、60万円が控除されることになります。

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贈与税額の控除

生前贈与を受けている場合、贈与税を支払っているので、相続税を支払うと2重で税金を支払うことになります。そのため、贈与税の金額が控除され、贈与税のほうが多ければ還付されます。

相続税の計算は税理士のサポートが必要

相続税の計算は、まずは財産を全て洗い出し、現金化した場合の金額を計算、負債との相殺、具体的な計算、控除が適用される場合は控除額の計算、とやらなければならないことがたくさんあります。税理士でも計算が複雑で、ミスが起きないかかなり注意しなければならないため、税理士のサポートを受けて相続税の計算をするのがおすすめです。
もし間違って計算してしまった場合、余分に相続税を支払うことにもつながりますし、税理士に相談すれば節税する方法をアドバイスしてもらうこともできるため、お悩みの方は一度税理士に相談してみましょう。