遺贈で遺産を相続したけど、税金はかかるのか、かかるとしたらどれくらいかかるのか、疑問に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
遺贈とは、普通の相続とはどう違うのか、相続税の計算はどうなるのか、見ていきましょう。
遺贈とは?
遺贈とは、遺言書によって本来の法定相続人以外の人が相続することを言います。相続人とは、遺言書によって相続する人が指定されていれば、誰でもなることができますが、税務上では法定相続人以外の人が相続することを遺贈と呼んでいます。
遺贈には2種類あり、1つ目は包括遺贈。
包括遺贈は遺産の全て、または一部を割合で指定する遺贈のことです。例えば、遺産のうち3割をAさんに相続します、という具合です。この場合、プラスの遺産だけでなくマイナスの遺産も遺贈されるので、被相続人に借金やローンが合った場合、負債も相続することになります。
2つ目は特定遺贈。
特定遺贈とは、遺産のうち特定の財産を指定して遺贈することです。例えば、遺産のうち不動産だけをBさんに相続します、という具合です。相続する人は自由に相続を承認・放棄することができます。
遺贈と聞くと、相続とはまた別のものに聞こえるので、相続税がかからないと思う方も多いですが、あくまで相続の1つのカタチなので、相続税もかかることになります。
相続税は2割加算になる可能性が高い
遺贈かどうかにかかわらず、相続税は被相続人と一親等の親族以外が相続すると、2割加算されることになります。
一親等の親族とは、被相続人から見て、両親、子供、配偶者だけです。祖父母や孫、兄弟姉妹は一親等の親族にはならないので注意が必要です。
そのため、遺贈によって、法律的に相続するはずだった人以外が相続し、その人が被相続人と一親等の親族でない場合は、相続税が2割加算されることを覚えておきましょう。
不動産取得税がかかる可能性も
遺贈によって法定相続人以外の人が不動産を相続する場合、不動産取得税がかかる可能性もあります。
不動産取得税がかかるのは、
・遺贈によって相続人以外に相続された場合
・特定遺贈であること
が条件となります。
不動産取得税の計算方法は、基本的に
課税標準額×税率
で計算されます。
課税標準額とは、実際のその不動産の価格ではなく、固定資産課税台帳に登録されている価格のことです。
税率は基本的に4%で計算されます。
ただし、住宅用の不動産(事務所や別荘などの住宅は除く)であれば、令和3年3月31日までは3%に軽減されています。
遺贈の相続税の計算方法
遺贈したら相続税を支払う必要がありますが、だいたいどれくらい支払う必要があるのか気になりますよね。
相続人以外が遺贈された場合の相続税の計算は、普通の相続税の計算とあまり大きく変わりません。
計算をする際は、
・法定相続人に遺贈された相続人を含めない
・各相続人ごとの相続税を計算する際に、遺贈された相続人の相続税を計算する
という具合に計算していきます。
そのため、まずは普通の相続税の計算通りに計算していきます。
遺産総額を求める
まずは遺産の総額を求めます。
遺産には預金や保険、不動産などプラスの遺産だけなく、借金やローンなどのマイナスの遺産もある可能性があるので、きちんと洗い出すようにしましょう。
これらの情報をきちんと洗い出すには、被相続人と親しい間柄にある人に協力を依頼することが必要です。
というのも、預金や保険など、とてもプライベートな内容が多いので、被相続人の子供や両親など、本来の法定相続人である人が情報を持っていることがほとんどです。
彼らの協力がないと、遺産のすべてを洗い出すのはとても難しいので、できれば協力を依頼するようにしましょう。
法定相続人の数を求める
法定相続人とは、法律上相続する権利のある人のことで、遺贈された相続人は数には含めません。
法定相続人には優先順位があり、
1.子供・孫
2.両親・祖父母
3.兄弟姉妹
となります。配偶者がいる場合はここに配偶者がプラスされます。
例えば、子供しかいない場合は子供が法定相続人に、子供や孫がいない場合は両親が法定相続人に、そこに配偶者がいれば配偶者をプラスします。
基礎控除額を求める
法定相続人の数が分かったら、基礎控除額を求めます。
基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数、で求めます。
法定相続人が配偶者と子供2人の場合、法定相続人は3人になるので、基礎控除額は4,800万円になります。
法定相続人が両親のみの場合、法定相続人は2人になるので、基礎控除額は4,200万円になります。
基礎控除額が分かったら、遺産総額から基礎控除額を引き、その金額が課税対象額となります。
各法定相続人ごとの相続税を計算する
課税対象額が分かったら、各法定相続人ごとの相続税を計算します。
各法定相続人の取り分は、配偶者がいる場合、
子供がいない場合→配偶者が100%
子供がいる場合→配偶者が1/2、残りを子供が均等に配分
父母がいる場合→配偶者が2/3、父母が1/3
兄弟がいる場合→配偶者が3/4、兄弟が1/4
配偶者がいない場合、
子供→100%(父母は0%)
子供がいない場合→父母が100%
子供、父母がいない場合→兄弟が100%
となります。
各法定相続人の取り分が明確になったら、その取り分に税率をかけていきます。
法定相続分によって決まった取り分 税率 控除額
1000万円以下 10% 0円
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円
例えば、課税対象額が2億円、配偶者と子供2人がいる場合、
配偶者の取り分は1/2で1億円、税率30%をかけて700万円の控除額を引くと、2,300万円が法定相続人分となります。
子供はそれぞれ取り分が1/4の5,000万円、税率20%をかけて200万円の控除額を引くと、800万円が法定相続分となります。
全てを合算して、2,300万円+800万円+800万円の3,900万円が相続税となります。
各相続人が支払う相続税を遺産の取得額に応じて振り分ける
相続税の全額が分かったら、実際に相続する取得額に応じて、相続税を振り分けます。
例えば、相続税の全額が2000万円だとします。
配偶者、子供1人、遺贈によって被相続人のお世話をしていた人が1人の合計3人が相続するとします。
配偶者の取り分が500万円、子供の取り分が500万円、世話人が1,000万円を相続するとしたら、支払う相続税は、
配偶者→取得割合=25%、相続税は2,000万円×25%=500万円
子供→取得割合=25%、相続税は2,000万円×25%=500万円
世話人→取得割合=50%、相続税は2,000万円×50%=1,000万円
となります。
さらに、世話人は被相続人と一親等の親族ではないため、相続税は2割加算されることになり、
1,000万円×1.2=1,200万円
が相続税となります。
まとめ
遺贈も相続と同じように相続税を支払うことになります。
ただ、遺贈の場合、不動産取得税がかかることがあったり、相続税も2割加算されることになるので、実際には普通の相続税より多く支払うことがよくあります。
また、遺産総額を求める際には、被相続人の親族の協力が不可欠ですし、正確な金額を求めるのには複雑な計算が必要になることが多いので、専門家に依頼するのがおすすめです。