賃貸アパートを相続したけど、相続税がどれくらいかかるか心配…
節税対策のためにアパートを購入しようか悩んでいるけど、本当に節税対策になるのか…
アパートの相続について悩まれている方がいるとしたら、大きく分けてこの2パターンではないでしょうか。
では実際に、アパートを相続する際、相続税はどれくらいかかるのでしょうか。また、節税対策になるのでしょうか。
賃貸アパートの相続税の計算方法
アパートを相続した際、相続税の計算は土地と建物でいったん分けて計算します。
不動産の相続というと、土地だけの場合もあるため、土地と建物で分けて計算するようになっているんですね。
土地の評価額と建物の評価額をそれぞれ計算したら、賃貸物件に関しては減額処置があるため、評価額を減額をします。
最後に、その他の遺産も全て合わせて相続税の計算をします。
土地の評価額を計算する
土地の評価額を計算する方法は2つあり、路線価方式と倍率方式という方法があります。路線価方式は都心部や住宅街などの評価額を計算する時に使用されることが多く、倍率方式は田舎の土地や山林、農地などの評価額を計算する時に主に使用されます。
路線価方式
路線価とは、国税庁が決める、道路に面した土地1平方メートルあたりの評価額のことです。全国すべての道路に定められているわけではないので、路線価がない土地は倍率方式で評価額を決めることになります。
路線価がある場合は路線価方式で、下記のような計算方法で評価額を決めます。
土地の評価額=路線価×土地の面積×補正率
補正率とは、例えば道路から奥まっていたり、土地がいびつな形だったり、崖のそばだったりすると、土地としては利用価値が低くなるとされ、評価額が下がることになります。
路線価や補正率の詳細についてはこちら
倍率方式
路線価が設定されていない場合、倍率方式で土地の評価額を決めていきます。
毎年送られてくる固定資産税評価証明書に記載されている土地価額に1.14をかけた額が土地の評価額になります。
1.14をかける理由としては、固定資産税の評価額は、実際の土地の評価額の70%に設定されています。対して相続税の評価額は、実際の土地の評価額の80%に設定されるので、その差額分を1.14倍して埋めることになります。
賃貸アパートの土地は軽減処置を受けられる
賃貸アパートや一軒家のある土地を、「貸家建付地」と言います。土地と建物の両方を所有していて、建物を貸し出していることが条件になり、貸家建付地は土地の評価額において減額処置を受けることができます。
減額処置には「借地権割合」と「借家権割合」の2つあり、借地権割合は路線価を見て確認することができます。土地によって30%~90%の間で決められています。借家権割合は30%と決まっています。
また、同じアパートや一軒家で、一部だけ貸し出している場合はその部屋の割合(賃貸割合)もかけて計算します。
貸家建付地の評価額の計算式
評価額×(1-借地権割合×0.3(借地権割合)×賃貸割合)
例えば路線価が1㎡あたり20万円で、広さが200㎡の土地のが合い、評価額は6,000万円になります。借地権割合が60%、賃貸割合が100%だとしたら、
6,000万円×(1-0.4×0.3×1)=5,280万円
となり、課税評価額は5,280万円になります。
6,000万円が5,280万円、というとそんなに減額されていないように見えますが、そもそも相続においては、路線価は実際の土地の価格より7~8割に下げてあるので、現金で相続するよりは節税対策につながっているんですね。
建物の評価額を計算する
土地の評価額が分かったら、次は建物の評価額を計算します。賃貸物件などの建物の評価額を計算する時は、土地の固定資産税評価額を利用します。計算式も貸家建付地の評価額の計算式に似ていて、借家権割合と賃貸割合をかけて算出します。
計算式は、
賃貸物件建物の評価額=固定資産税評価額×(1-0.3(借家権割合)×賃貸割合)
となっています。
固定資産税評価額が6,000万円の土地に建物があり賃貸割合が100%の場合、6,000万円×(1-0.3×1)=4,200万円
が評価額になります。
こちらも、現金で6,000万円を所有しているよりは、少なくとも30%は評価額が下がるので、その分節税対策につながると言えます。
小規模宅地等の特例も利用しましょう
相続税の特例に、小規模宅地等の特例というものがあります。被相続人と一緒に住んでいた家や、事業で利用していた土地がある場合、相続によって相続人の暮らしが圧迫されないように設けられた制度です。
被相続人と一緒に住んでいた家を相続する場合、80%の減額処置を受けることができます。アパートなどの貸付事業用宅地は200㎡までを上限に、50%の減額処置を受けられます。自宅とアパートが兼用の場合は、330㎡までを上限に80%減額されます。
ただ注意しなければならないのが、平成30年に法改正があり、相続した時点でアパートの経営が3年以上経っていないと、小規模宅地等の特例を利用することができなくなりました。節税対策でアパート経営を考えている方は、それも計算に入れて事業をスタートするといいでしょう。
実際の相続税の計算方法
これまでは土地や建物の評価額を計算してきましたが、実際に相続税がいくらになるのか、というところを見ていきましょう。
相続税の計算では、いったんアパートや土地だけでなく、預貯金有価証券、車、ゴルフの会員権など、財産を全て合算させます。その時、ローンや借金があればそれは差し引くようにしましょう。
土地やアパートの評価額も全て合算し、遺産総額が分かったら、次は相続税全体の計算をしていきます。
基礎控除を利用しましょう
まずは、遺産総額から基礎控除を引きましょう。
基礎控除の金額は3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算されます。
法定相続人とは、法律によって定められた相続人のことで、実際に相続する人と必ずしも一致するわけではありません。
基礎控除や法定相続人についての詳細はこちら
法定相続人には優先順位があり、
1.子供、孫
2.両親祖父母
3.兄弟姉妹
この順位が高いほうが法定相続人となり、配偶者がいる場合はそこに配偶者がプラスされます。
例えば、配偶者と子供2人、両親がいる場合は、優先順位の高い子供2人と配偶者が法定相続となります。
法定相続人が1人の場合は3,600万円、2人の場合は4,200万円、3人の場合は4,800万円が基礎控除額となります。
遺産総額がこの基礎控除内である場合、相続税は0円となります。
基礎控除額を超える場合、超えた分に関して税金がかかってきます。
相続税の計算をしましょう
相続税の計算方法は、法定相続分をもとに計算します。
法定相続分は、法律によって定められた、法定相続人のそれぞれの遺産の取り分のことです。
実際の取り分とは関係なく、法律によって定められた取り分で、それをもとに計算します。
例えば、配偶者と子供2人が法定相続人の場合、配偶者が50%、子供がそれぞれ25%ずつ取り分となります。
その取り分から、下記の表をもとに相続税の額を計算します。
法定相続分によって決まった取り分 税率 控除額
1000万円以下 10% 0円
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円
例えば遺産総額から基礎控除を引いた金額が5,000万円、配偶者と子供2人が法定相続人の場合、配偶者の法定相続分は2,500万円、子供がそれぞれ1,250万円になります。
そこから上記の表をもとに相続税を計算すると、配偶者は2,500万円×15%-50万円=325万円、子供はそれぞれ137万5,000円が相続税となります。
3人分を合算して相続税は全体で600万円になります。
全体の相続税を計算したら、実際に相続する人で割り振っていきます。
まとめ
アパートの相続税の計算は、土地の評価額、建物の評価額を求めることから始まります。路線価方式で計算する場合、税理士であっても経験が浅いと計算を間違えるくらい複雑な計算になってしまいます。
自分で計算して間違って申告してしまった場合、ペナルティで罰金が課せられる場合もあります。
アパートを相続して、相続税を計算しなければならない、と言う方はまずは税理士に相談してみるのがおすすめです。